【看護学生必見】実習・国試で絶対覚えるべき薬剤完全ガイド – パート5:感染症・抗生物質完全攻略
看護学生の皆さん、実習で「この患者さんはなぜこの抗生物質を使ってるの?」「MRSA感染の患者さんの看護で注意することは?」と疑問に思ったことはありませんか?感染症・抗生物質の知識は、実習でも国家試験でも最重要分野の一つです。

なぜ感染症・抗生物質の知識が重要なのか?
現代医療において、感染症治療は看護師にとって避けて通れない分野です。特に以下の理由から、看護学生の段階でしっかりとした知識を身につける必要があります。
- 実習での頻出度が高い:ほぼ全ての実習先で感染症患者に出会う
- 薬剤耐性菌の増加:MRSA、ESBL産生菌などへの適切な対応が必須
- 国家試験での重要度:毎年必ず出題される分野
- 患者安全への直結:適切な感染対策が患者の命を守る
- 医療チームでの連携:医師との情報共有に必要な基礎知識


抗生物質の基本分類と覚え方
抗生物質は作用機序によって大きく分類されます。看護学生が必ず覚えるべき主要4系統を、覚えやすい特徴と一緒に紹介します。
抗生物質の主要分類 | ||||
---|---|---|---|---|
系統 | 作用機序 | 代表薬 | 覚え方のコツ | 実習頻度 |
ペニシリン系 | 細胞壁合成阻害 グラム陽性菌 |
アンピシリン ペニシリンG |
「ペニ(細胞壁)を破る アレルギーに注意」 |
★★★ |
セフェム系 | 細胞壁合成阻害 広域スペクトラム |
セファゾリン セフトリアキソン |
「世代が上がるほど グラム陰性菌に強い」 |
★★★ |
マクロライド系 | 蛋白質合成阻害 非定型菌に有効 |
クラリスロマイシン アジスロマイシン |
「マクロ(大きな分子)で 非定型菌をやっつける」 |
★★☆ |
キノロン系 | DNA複製阻害 グラム陰性菌に強い |
レボフロキサシン シプロフロキサシン |
「キノ(黄色、18歳)未満ダメ 腱(けん)に注意」 |
★★★ |
★★★:実習で非常によく見る ★★☆:実習でときどき見る
1. ペニシリン系抗生物質 – 感染症治療の基本薬
ペニシリン系は世界初の抗生物質として発見され、現在でも感染症治療の中核を担っています。細胞壁合成を阻害することで細菌を殺菌する作用があります。
① ペニシリン系の基本情報
🔵 ペニシリン系の基本データ
作用機序 | 細胞壁のペプチドグリカン合成阻害→細菌の細胞壁破壊→殺菌 |
抗菌スペクトラム | グラム陽性菌(ブドウ球菌、連鎖球菌)、一部のグラム陰性菌 |
代表的な適応症 | 肺炎、敗血症、髄膜炎、感染性心内膜炎、梅毒 |
投与経路 | 静脈内投与、筋肉内投与、経口投与(アンピシリン等) |
実習頻度 | ★★★ 非常に高い(特に手術予防投与で頻用) |
② 主要なペニシリン系薬剤
ペニシリン系の主要薬剤 | |||
---|---|---|---|
一般名(商品名) | 特徴 | 主な適応 | 投与方法 |
ペニシリンG (ペニシリン) |
・最も古典的なペニシリン ・グラム陽性菌に高い効果 ・β-ラクタマーゼに分解される |
・溶血性連鎖球菌感染症 ・梅毒 ・髄膜炎球菌感染症 |
点滴静注 筋注 |
アンピシリン (ビクシリン) |
・経口投与可能 ・広域スペクトラム ・腸球菌にも有効 |
・尿路感染症 ・呼吸器感染症 ・腸球菌感染症 |
経口 点滴静注 |
アンピシリン/スルバクタム (ユナシン) |
・β-ラクタマーゼ阻害薬配合 ・MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)に有効 |
・術後感染予防 ・皮膚軟部組織感染症 ・腹腔内感染症 |
点滴静注 |
③ ペニシリン系の重要な副作用とアレルギー
ペニシリン系で最も注意すべきはアレルギー反応です。軽度の皮疹から命に関わるアナフィラキシーショックまで幅広い症状を呈するため、投与前の問診と投与中の観察が極めて重要です。
⚠️ ペニシリンアレルギーの症状と対応
重症度 | 症状 | 対応 |
---|---|---|
軽度 | ・皮疹、蕁麻疹 ・軽度のかゆみ ・軽微な胃腸症状 |
・投与中止 ・抗ヒスタミン薬投与 ・経過観察 |
中等度 | ・広範囲の皮疹 ・血管性浮腫 ・呼吸困難 ・血圧低下 |
・投与即座中止 ・ステロイド投与 ・酸素投与 ・昇圧薬準備 |
重篤 (アナフィラキシー) |
・急激な血圧低下 ・気道閉塞 ・意識消失 ・心停止の危険 |
・エピネフリン0.5mg筋注 ・大量輸液 ・気道確保 ・ICU管理 |

ペニシリン系のポイントまとめ
- 作用機序:細胞壁合成阻害で殺菌作用
- 適応菌:主にグラム陽性菌(ブドウ球菌・連鎖球菌)
- 最重要注意点:アレルギー反応(アナフィラキシー含む)
- 代表薬:アンピシリン、ユナシン(アンピシリン/スルバクタム)
- 実習頻度:★★★(手術予防投与で非常によく見る)
- 国試ポイント:セフェム系との交叉アレルギー約10%
📚 続き:ペニシリン系の実習場面と観察ポイント、セフェム系について詳しく解説します!
ペニシリン系の実習でよく遭遇する場面と観察ポイント
ペニシリン系抗生物質は実習で非常によく目にする薬剤です。特に手術予防投与と感染症治療で頻繁に使用されるため、看護学生は使用場面と観察ポイントをしっかり押さえておく必要があります。
💡 実習でよく見るペニシリン系の使用場面
場面1:手術前の感染予防投与(SSI予防)
- 執刀30分前にアンピシリン/スルバクタム(ユナシン)2gを点滴投与
- 手術時間が3時間以上の場合は追加投与
- 投与前にアレルギー歴の確認が必須
- 皮膚切開前に血中濃度が十分になるタイミングで投与
場面2:蜂窩織炎(ほうかしきえん)の治療
- MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)が原因の皮膚軟部組織感染症
- アンピシリン/スルバクタム 3g×3回/日の点滴投与
- 発赤・腫脹・疼痛・熱感の改善を観察
- 培養結果に基づく感受性確認
場面3:尿路感染症の治療
- 腸球菌による単純性膀胱炎・腎盂腎炎
- アンピシリン 2g×4回/日の点滴投与
- 尿検査での白血球・細菌の減少確認
- 発熱・排尿時痛・頻尿の改善観察
ペニシリン系投与時の看護観察ポイント
ペニシリン系投与時の観察項目 | ||
---|---|---|
観察項目 | 観察内容 | 異常時の対応 |
アレルギー反応 | ・皮疹、蕁麻疹の出現 ・かゆみの訴え ・呼吸状態(喘鳴、呼吸困難) ・血圧・脈拍の変化 ・意識レベルの変化 |
・投与即座中止 ・医師へ緊急連絡 ・エピネフリン準備 ・酸素投与準備 ・バイタルサイン頻回測定 |
感染症状の改善 | ・発熱の推移 ・白血球数・CRPの変化 ・局所症状(発赤・腫脹・疼痛) ・培養結果と感受性 |
・改善不良時は耐性菌検討 ・培養再検査 ・他系統への変更検討 |
消化器症状 | ・悪心・嘔吐 ・腹痛・下痢 ・食欲不振 ・腹部膨満感 |
・制吐薬投与 ・水分電解質バランス管理 ・CDiff腸炎の除外 |


セフェム系との交叉アレルギー
ペニシリン系で重要なのは、セフェム系抗生物質との交叉アレルギーです。これは国家試験でもよく出題される重要なポイントです。
⚠️ ペニシリン-セフェム交叉アレルギー
交叉アレルギー頻度 | 約8-10%(以前言われていた50%よりも実際は低い) |
リスクが高い場合 | ・重篤なペニシリンアレルギー既往 ・アナフィラキシー既往 ・即時型アレルギー反応既往 |
リスクが低い場合 | ・軽度の皮疹のみの既往 ・遅延型アレルギー反応 ・家族歴のみでアレルギー既往なし |
臨床判断 | 重篤なアレルギー既往がない限り、適応があればセフェム系使用可能 ただし慎重な観察は必須 |
国家試験でよく出るペニシリン系のポイント
📝 国試頻出ポイント
- 作用機序:細胞壁のペプチドグリカン合成阻害
- 殺菌・静菌:殺菌性(細菌を死滅させる)
- 抗菌スペクトラム:主にグラム陽性菌(MSSA、連鎖球菌、腸球菌)
- 最重要副作用:アレルギー反応(アナフィラキシーショック)
- セフェム系交叉アレルギー:約8-10%の頻度
- β-ラクタマーゼ:ペニシリナーゼにより分解される
- 適応疾患:溶血性連鎖球菌感染症、梅毒、髄膜炎球菌感染症

ペニシリン系 実習ポイントまとめ
- 投与前確認事項:必ずアレルギー歴を確認
- 投与中観察:開始後30分間は特に注意深く観察
- アレルギー症状:皮疹・蕁麻疹・呼吸困難・血圧低下
- 感染症改善評価:発熱・白血球数・CRP・局所症状
- 交叉アレルギー:セフェム系との交叉性約8-10%
- 頻用場面:手術予防投与・皮膚軟部組織感染症・尿路感染症
📚 続き:セフェム系抗生物質の分類と世代別特徴について詳しく解説します!
3. マクロライド系抗生物質 – 非定型肺炎の特効薬
マクロライド系抗生物質は、ペニシリン系やセフェム系とは異なる作用機序を持つ抗生物質です。特に「非定型肺炎」の治療で威力を発揮し、マイコプラズマやクラミジアなどの特殊な細菌に効果を示します。

① マクロライド系の基本情報
🟡 マクロライド系の基本データ
作用機序 | 細菌の70Sリボソームに結合→蛋白質合成阻害→静菌作用 |
抗菌スペクトラム | グラム陽性菌、一部のグラム陰性菌、非定型菌(マイコプラズマ、クラミジア) |
特徴 | 細胞壁を持たない非定型菌に有効、組織移行性良好、経口投与可能 |
主な適応症 | 非定型肺炎、百日咳、クラミジア感染症、レジオネラ症 |
実習頻度 | ★★☆ 中程度(呼吸器内科で頻用) |
② 主要なマクロライド系薬剤
マクロライド系の主要薬剤 | ||||
---|---|---|---|---|
一般名(商品名) | 世代 | 特徴 | 主な適応 | 投与回数 |
エリスロマイシン (エリスロシン) |
第1世代 | ・古典的マクロライド ・胃腸障害が多い ・薬物相互作用あり |
・マイコプラズマ肺炎 ・百日咳 ・レジオネラ症 |
4回/日 |
クラリスロマイシン (クラリス) |
第2世代 | ・胃腸障害が軽減 ・組織移行性良好 ・H.pylori除菌にも使用 |
・非定型肺炎 ・副鼻腔炎 ・H.pylori除菌 |
2回/日 |
アジスロマイシン (ジスロマック) |
第3世代 | ・半減期が長い ・3日間服薬で効果持続 ・グラム陰性菌にも有効 |
・非定型肺炎 ・性感染症 ・咽頭炎 |
1回/日 (3日間) |
③ 非定型肺炎とは?
マクロライド系を理解する上で、「非定型肺炎」の概念は極めて重要です。これは従来の肺炎とは異なる特徴を持つ肺炎の総称です。
🫁 非定型肺炎の特徴
項目 | 典型的肺炎 | 非定型肺炎 |
---|---|---|
原因菌 | 肺炎球菌 黄色ブドウ球菌 |
マイコプラズマ クラミジア レジオネラ |
症状 | 高熱・悪寒戦慄 膿性痰 急性発症 |
微熱・頭痛 乾性咳嗽 緩徐な発症 |
胸部X線 | 大葉性肺炎 肺胞性陰影 |
間質性肺炎 びまん性陰影 |
治療薬 | β-ラクタム系 (ペニシリン・セフェム) |
マクロライド系 キノロン系 |


④ マクロライド系の副作用と薬物相互作用
マクロライド系では、消化器症状と薬物相互作用が主な注意点です。特に薬物相互作用は重篤な副作用を引き起こす可能性があります。
⚠️ マクロライド系の副作用
副作用の種類 | 症状・機序 | 看護のポイント |
---|---|---|
消化器症状 | 悪心・嘔吐・下痢・腹痛 モチリン様作用による |
食後投与で軽減 症状の程度と持続期間確認 |
QT延長症候群 | 心電図のQT間隔延長 致命的不整脈のリスク |
心電図モニタリング 動悸・失神の観察 |
肝機能障害 | AST・ALT上昇 胆汁うっ滞 |
定期的な肝機能検査 黄疸・食欲不振の観察 |
薬物相互作用 | CYP3A4阻害作用 他剤の血中濃度上昇 |
併用薬剤の確認 相互作用のチェック |
⑤ 重要な薬物相互作用
マクロライド系で特に注意すべきは薬物代謝酵素CYP3A4の阻害作用です。これにより他の薬剤の血中濃度が上昇し、重篤な副作用を引き起こす可能性があります。
🚨 注意すべき薬物相互作用
併用薬 | 相互作用の結果 | 臨床的影響 |
---|---|---|
ワルファリン | ワルファリン血中濃度↑ | 出血リスク増大 PT-INR上昇 |
ジゴキシン | ジゴキシン血中濃度↑ | ジギタリス中毒 不整脈リスク |
カルバマゼピン | カルバマゼピン血中濃度↑ | 中毒症状 (複視、めまい、意識障害) |
シクロスポリン | シクロスポリン血中濃度↑ | 腎毒性増強 血圧上昇 |
⑥ 実習でよく見るマクロライド系の使用場面
💡 実習でのマクロライド系使用場面
場面1:非定型肺炎の治療
- マイコプラズマ肺炎:クラリスロマイシン 400mg×2回/日、7日間
- クラミジア肺炎:アジスロマイシン 500mg×1回/日、3日間
- 症状:乾性咳嗽、微熱、頭痛、咽頭痛
- 胸部X線:間質性陰影、症状に比し軽度
場面2:百日咳の治療
- クラリスロマイシン 400mg×2回/日、7日間
- 特徴的な痙攣性咳嗽(コンコンケー)
- 感染拡大防止効果あり
場面3:H.pylori除菌療法
- クラリスロマイシン + プロトンポンプ阻害薬 + アモキシシリン
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の根本治療
- 7日間の3剤併用療法

マクロライド系 重要ポイント
- 作用機序:蛋白質合成阻害(70Sリボソーム結合)
- 最大の特徴:非定型菌(マイコプラズマ、クラミジア)に有効
- 適応疾患:非定型肺炎、百日咳、H.pylori除菌
- 代表薬:クラリスロマイシン、アジスロマイシン
- 要注意副作用:QT延長、薬物相互作用(CYP3A4阻害)
- 国試ポイント:β-ラクタム系が効かない非定型肺炎の第一選択
📚 続き:キノロン系抗生物質の特徴と18歳未満禁忌について詳しく解説します!
4. キノロン系抗生物質 – DNA複製阻害の強力な薬剤

Screenshot
キノロン系抗生物質は、これまで紹介した抗生物質とは全く異なる作用機序を持つ薬剤です。DNA複製を直接阻害することで強力な殺菌効果を発揮しますが、同時に重要な副作用や使用制限もあります。

① キノロン系の基本情報
🟢 キノロン系の基本データ
作用機序 | DNAジャイレース・トポイソメラーゼⅣ阻害→DNA複製阻害→殺菌作用 |
抗菌スペクトラム | 広域(特にグラム陰性菌に強い)、緑膿菌にも有効 |
組織移行性 | 優秀(前立腺、骨組織、髄液にも移行) |
投与方法 | 経口・静脈投与可能、バイオアベイラビリティ高い |
実習頻度 | ★★★ 非常に高い(尿路感染症、呼吸器感染症で頻用) |
② 主要なキノロン系薬剤
キノロン系は世代によって抗菌スペクトラムが異なります。現在臨床で使用されるのは主に第3世代(ニューキノロン)と第4世代です。
キノロン系の主要薬剤 | ||||
---|---|---|---|---|
一般名(商品名) | 世代 | 特徴 | 主な適応 | 実習頻度 |
レボフロキサシン (クラビット) |
第3世代 | ・レスピラトリーキノロン ・肺炎球菌にも有効 ・呼吸器感染症に適する |
・肺炎 ・尿路感染症 ・副鼻腔炎 |
★★★ |
シプロフロキサシン (シプロキサン) |
第3世代 | ・緑膿菌に最も有効 ・グラム陰性菌に強い ・組織移行性良好 |
・緑膿菌感染症 ・複雑性尿路感染症 ・骨髄炎 |
★★☆ |
モキシフロキサシン (アベロックス) |
第4世代 | ・嫌気性菌にも有効 ・グラム陽性菌活性強化 ・1日1回投与 |
・市中肺炎 ・副鼻腔炎 ・腹腔内感染症 |
★☆☆ |
③ キノロン系の重要な副作用
キノロン系は効果が高い反面、特徴的で重篤な副作用があります。特に腱障害と中枢神経系への影響は臨床上重要です。
⚠️ キノロン系の特徴的副作用
副作用 | 症状・機序 | 看護のポイント |
---|---|---|
腱障害 (腱炎・腱断裂) |
・アキレス腱断裂が最多 ・コラーゲン合成阻害 ・高齢者・ステロイド併用でリスク↑ |
・腱痛・腫脹の観察 ・激しい運動の制限 ・異常時は即座に投与中止 |
中枢神経系障害 | ・頭痛・めまい・不眠 ・痙攣・錯乱状態 ・GABA受容体阻害 |
・意識状態の観察 ・転倒リスクの評価 ・痙攣既往者は要注意 |
光線過敏症 | ・紫外線に過敏反応 ・皮膚炎・水疱形成 ・投与中止後も持続 |
・直射日光を避ける指導 ・外出時の日焼け止め使用 ・皮膚症状の観察 |
QT延長症候群 | ・心電図QT間隔延長 ・torsades de pointes ・致命的不整脈 |
・心電図モニタリング ・電解質バランス管理 ・動悸・失神の観察 |
④ 18歳未満禁忌の理由
キノロン系が18歳未満で使用禁忌とされる理由は、成長期の軟骨に対する悪影響です。これは国家試験でも頻出のポイントです。
🚫 キノロン系18歳未満禁忌の根拠
禁忌理由 | 成長軟骨への影響(軟骨細胞のDNA合成阻害) |
動物実験での所見 | 幼若動物で関節軟骨の糜爛・変性、成長阻害 |
臨床での影響 | 関節痛、歩行障害、成長障害の可能性 |
例外的使用 | 生命に関わる重篤感染症で他に選択肢がない場合のみ |
妊婦・授乳婦 | 原則禁忌(胎児・乳児への影響を考慮) |


⑤ キノロン系の薬物相互作用
キノロン系は金属イオンとの相互作用が特徴的で、吸収が大幅に低下します。服薬指導で重要なポイントです。
💊 キノロン系の重要な相互作用
相互作用物質 | 機序・影響 | 対策 |
---|---|---|
金属イオン (Mg²⁺、Ca²⁺、Al³⁺、Fe²⁺) |
キレート形成→吸収率大幅低下 (10-90%低下) |
2時間以上間隔をあけて服用 制酸薬・鉄剤との併用注意 |
乳製品 | カルシウムによる吸収阻害 | 牛乳・ヨーグルトとの同時摂取回避 水で服薬 |
テオフィリン | テオフィリン血中濃度上昇 CYP1A2阻害 |
テオフィリン中毒症状の観察 血中濃度モニタリング |
ワルファリン | ワルファリン効果増強 CYP2C9阻害 |
PT-INR頻回測定 出血徴候の観察 |
⑥ 実習でのキノロン系使用場面
💡 実習でよく見るキノロン系使用場面
場面1:複雑性尿路感染症
- レボフロキサシン 500mg×1回/日、7-14日間
- グラム陰性桿菌(大腸菌、緑膿菌)による感染
- 前立腺炎、腎盂腎炎などの上部尿路感染症
- カテーテル関連尿路感染症
場面2:市中肺炎
- レボフロキサシン 750mg×1回/日、5-7日間
- 肺炎球菌、マイコプラズマ、クラミジアに有効
- 重症例や高齢者の肺炎
- β-ラクタム系アレルギー患者の選択肢
場面3:緑膿菌感染症
- シプロフロキサシン 400mg×2回/日(点滴)
- 人工呼吸器関連肺炎(VAP)
- 熱傷感染症、褥瘡感染
- 免疫不全患者の感染症
場面4:骨髄炎
- シプロフロキサシン経口 750mg×2回/日、6-8週間
- 優秀な骨組織移行性を活用
- 黄色ブドウ球菌性骨髄炎
- 長期経口治療が可能

⑦ 国家試験でよく出るキノロン系のポイント
📝 国試頻出ポイント
- 作用機序:DNAジャイレース・トポイソメラーゼⅣ阻害
- 18歳未満禁忌:成長軟骨への影響(最重要!)
- 腱障害:アキレス腱断裂、高齢者・ステロイド併用でリスク↑
- 光線過敏症:紫外線回避の必要性
- 金属イオンとの相互作用:制酸薬・鉄剤で吸収阻害
- 組織移行性:前立腺・骨・髄液への良好な移行
- 適応疾患:尿路感染症・呼吸器感染症・緑膿菌感染症
キノロン系 覚え方のコツ
- 作用機序:「キノ(黄色)でDNA複製ストップ」
- 年齢制限:「キノ(黄色)は18歳未満ダメ」
- 腱障害:「アキレス腱(けん)断裂に注意」
- 光線過敏症:「キノ(黄色)で日光アレルギー」
- 相互作用:「金属イオンで吸収低下→牛乳ダメ」
- 適応菌:「グラム陰性菌・緑膿菌に強い」
📚 続き:薬剤耐性菌(MRSA・ESBL産生菌)の対策と感染管理について詳しく解説します!
5. 薬剤耐性菌と感染対策 – 現代医療の最重要課題
薬剤耐性菌の増加は現代医療における深刻な問題です。実習でも必ず出会うMRSAやESBL産生菌への理解と適切な感染対策は、看護師として必須の知識です。

① 主要な薬剤耐性菌の種類と特徴
主要な薬剤耐性菌 | ||||
---|---|---|---|---|
略称 | 正式名称 | 耐性メカニズム | 有効薬剤 | 実習頻度 |
MRSA | メチシリン耐性 黄色ブドウ球菌 |
PBP2A産生 β-ラクタム系耐性 |
バンコマイシン リネゾリド |
★★★ |
ESBL | 基質拡張型 β-ラクタマーゼ産生菌 |
ESBL産生 セフェム系分解 |
カルバペネム系 タゾシン |
★★★ |
VRE | バンコマイシン耐性 腸球菌 |
vanA/vanB遺伝子 細胞壁合成経路変更 |
リネゾリド ダプトマイシン |
★☆☆ |
CRE | カルバペネム耐性 腸内細菌科細菌 |
カルバペネマーゼ産生 最後の砦が無効 |
コリスチン (腎毒性強) |
★☆☆ |
② MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
MRSAは実習で最も頻繁に遭遇する薬剤耐性菌です。院内感染の代表的な原因菌として、厳格な感染対策が必要です。
🔴 MRSAの基本情報
耐性メカニズム | PBP2A(ペニシリン結合蛋白質2A)産生→β-ラクタム系全てに耐性 |
感染経路 | 接触感染(医療従事者の手指、医療器具、環境表面) |
主な感染部位 | 皮膚軟部組織、肺炎、敗血症、手術部位感染、カテーテル関連感染 |
リスク因子 | 高齢者、免疫不全、長期入院、抗生物質使用歴、侵襲的処置 |
第一選択薬 | バンコマイシン(重症例)、リネゾリド(軽中等症) |
③ ESBL産生菌(基質拡張型β-ラクタマーゼ産生菌)
ESBL産生菌は主にグラム陰性菌(大腸菌、肺炎桿菌など)で、セフェム系抗生物質を分解する酵素を産生します。
🟡 ESBL産生菌の特徴
産生菌種 | 大腸菌、クレブシエラ、プロテウス、エンテロバクターなど |
耐性スペクトラム | ペニシリン系、セフェム系(1-3世代)、アズトレオナム |
感染症 | 尿路感染症、腹腔内感染症、血流感染、肺炎 |
有効薬剤 | カルバペネム系、タゾバクタム/ピペラシリン、第4世代セフェム |
検出法 | ESBL確認試験(CLSIガイドライン) |


④ 薬剤耐性菌に対する感染対策
薬剤耐性菌の感染対策は「標準予防策」+「接触予防策」が基本です。適切な感染対策により、患者間での伝播を防ぐことができます。
🛡️ 接触予防策の具体的内容
項目 | 対策内容 | 実習での注意ポイント |
---|---|---|
個室隔離 | ・個室管理が原則 ・同一耐性菌患者とのコホート可能 ・扉は閉鎖 |
・部屋の入退室時は必ず手指衛生 ・扉の開閉を最小限に |
手袋着用 | ・部屋入室時に着用 ・患者・環境に触れる前に着用 ・退室時に脱着 |
・清潔・不潔の区別を厳格に ・破損時は即座に交換 |
ガウン着用 | ・患者・環境に接触する際 ・長袖・撥水性のもの ・使い捨てが原則 |
・袖口から汚染が入らないよう注意 ・脱衣手順を正確に |
専用器具 | ・聴診器・血圧計等は専用 ・共用時は適切な消毒 ・使い捨て可能な器具推奨 |
・器具の持ち込み・持ち出しを記録 ・消毒方法を確認 |
⑤ 手指衛生の重要性
薬剤耐性菌の感染対策において、手指衛生は最も重要で効果的な方法です。WHOの「5つのタイミング」を遵守することが求められます。

薬剤耐性菌対策 重要ポイント
- MRSA:PBP2A産生、バンコマイシン有効、皮膚感染多い
- ESBL産生菌:セフェム系分解、カルバペネム有効、尿路感染多い
- 感染対策:接触予防策(個室・手袋・ガウン・専用器具)
- 手指衛生:WHO5つのタイミング厳守
- 実習ポイント:患者安全と感染拡散防止が最優先
📚 続き:C.difficile腸炎、国試対策、総まとめを解説します!
6. C.difficile関連下痢症(CDAD)
C.difficile関連下痢症は抗生物質投与に伴う重篤な合併症で、実習でも遭遇する可能性の高い病態です。
⚠️ C.difficile腸炎の基本情報
発症機序 | 抗生物質→正常細菌叢破綻→C.difficile増殖→毒素産生 |
高リスク抗生物質 | クリンダマイシン、アンピシリン、セフェム系、キノロン系 |
症状 | 水様性下痢、腹痛、発熱、白血球増多、偽膜性腸炎 |
診断 | 便中C.difficile毒素検出、便培養、CT所見 |
治療 | 原因抗生物質中止、メトロニダゾール、バンコマイシン経口 |
感染対策 | 接触予防策、石鹸と流水での手洗い(アルコール無効) |


7. 国家試験でよく出る感染症・抗生物質問題
📝 国試頻出ポイント
- ペニシリンアレルギー:セフェム系との交叉アレルギー約8-10%
- MRSA感染対策:接触予防策・個室隔離・バンコマイシン使用
- C.difficile腸炎:抗生物質関連下痢症・石鹸手洗い必須
- 非定型肺炎:マクロライド系が第一選択・β-ラクタム系無効
- キノロン系副作用:腱障害・18歳未満禁忌・光線過敏症
- 適正使用の原則:培養・感受性試験に基づく選択
8. 実習で使える!感染症・抗生物質の覚え方
感染症・抗生物質 暗記のコツ
- ペニシリン系:「ペニ(細胞壁)を破る、アレルギーに注意」
- セフェム系:「世代が上がるほどグラム陰性菌に強い」
- マクロライド系:「マクロ(大きな分子)で非定型菌をやっつける」
- キノロン系:「キノ(黄色、18歳)未満ダメ、腱(けん)に注意」
- MRSA対策:「個室(個)でバン(バンコマイシン)!手袋ガウン」
- C.difficile:「芽胞(がほう)だからアルコール無効、石鹸で洗浄」
9. まとめ:感染症・抗生物質の総復習
感染症・抗生物質 総まとめ | ||
---|---|---|
系統 | 最重要ポイント | 実習・国試での頻出度 |
ペニシリン系 | アレルギー反応・細胞壁合成阻害・グラム陽性菌に有効 | ★★★ 非常に高い |
セフェム系 | 世代分類・手術予防・広域スペクトラム | ★★★ 非常に高い |
マクロライド系 | 非定型肺炎・蛋白質合成阻害・薬物相互作用 | ★★☆ 中程度 |
キノロン系 | 腱障害・18歳未満禁忌・DNA複製阻害・グラム陰性菌 | ★★★ 非常に高い |
薬剤耐性菌 | MRSA・ESBL・接触予防策・手指衛生 | ★★★ 非常に高い |

🎯 もっと詳しく学びたい看護学生さんへ
感染症・抗生物質について、実習での感染対策や薬剤耐性菌対応、国家試験対策をもっと詳しく知りたい方は、かず学長の公式LINEで個別相談も可能です!
※登録者限定で実習で使える薬剤一覧表と国試対策問題集をプレゼント中!
📚 次回予告:パート6「実習頻出薬剤(消化器・呼吸器・外用薬・緊急薬)」をお楽しみに!
コメント