パート1では呼吸器の基礎メカニズムから酸素療法、スパイロメトリーまで学びました。パート2では、実際の患者さんの看護に直結する実践的な内容を詳しく解説していきます。


呼吸不全の病態と看護:Ⅰ型とⅡ型の決定的な違い
呼吸不全は看護師として必ず理解しておくべき病態です。特にⅠ型とⅡ型の違いを理解することで、適切な看護判断ができるようになります。
呼吸不全とは何か?
呼吸不全の定義
- 呼吸不全:血液中のガス交換ができなくなった状態
- 原因:酸素取り込み不足、二酸化炭素排出不全、またはその両方
- 診断基準:動脈血酸素分圧(PaO₂)が60mmHg以下
Ⅰ型呼吸不全とⅡ型呼吸不全の違い
呼吸不全の分類と特徴 | ||
---|---|---|
分類 | 特徴 | 主な原因疾患 |
Ⅰ型呼吸不全 (低酸素血症型) |
• PaO₂ ≤ 60mmHg • PaCO₂ ≤ 45mmHg(正常) • 酸素のみの問題 |
• 肺炎 • 肺水腫 • 肺塞栓症 • ARDS(急性呼吸窮迫症候群) |
Ⅱ型呼吸不全 (高炭酸ガス血症型) |
• PaO₂ ≤ 60mmHg • PaCO₂ ≥ 45mmHg(上昇) • 酸素と二酸化炭素の両方に問題 |
• COPD • 神経筋疾患 • 胸郭変形 • 呼吸中枢の障害 |

なぜⅡ型呼吸不全では酸素療法に注意が必要か?

とても良い質問ですね。これには「CO₂ナルコーシス」という重要な概念が関わっています。
工場の例で理解しよう
正常な工場(肺胞)の場合:
- 材料(酸素)を入れる → 製品(エネルギー)ができる → 廃棄物(CO₂)を出す
- 効率よく働く
壊れた工場(COPD)の場合:
- 材料をたくさん入れても → 不良品ばかり → 廃棄物が溜まる
- さらに材料を入れると → もっと廃棄物が溜まって工場がパンク
結論:壊れた工場(COPD患者)に無制限に材料(酸素)を入れると、廃棄物(CO₂)で窒息してしまう
CO₂ナルコーシスとは
- 定義:血中CO₂濃度上昇により意識レベルが低下する状態
- 症状:頭痛、傾眠、意識混濁、最悪の場合は昏睡
- 予防:COPD患者への酸素投与は慎重に(通常1-2L/分)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の看護
COPDは慢性的に進行する疾患で、長期間の管理が必要です。患者さんの生活の質を維持するための看護が重要になります。
COPDの病態生理
COPDで起こること
- 肺胞の破壊:ガス交換面積の減少
- 気道の炎症・狭窄:空気の通り道が細くなる
- 弾性の低下:肺が元に戻りにくくなる
- 結果:息を吐くのが困難になる
COPD患者への具体的な看護ポイント
COPD患者の看護ポイント | ||
---|---|---|
看護領域 | 具体的な方法 | 注意点 |
呼吸法指導 | • 口すぼめ呼吸 • 腹式呼吸 • 呼気時間を長くする |
無理をさせない 患者のペースに合わせる |
体位管理 | • ファーラー位 • 前傾姿勢 • 起座位 |
長時間同一体位を避ける 褥瘡予防 |
酸素療法 | • 低流量酸素投与 • 1-2L/分が基本 • SpO₂ 90-93%を目標 |
CO₂ナルコーシスに注意 意識レベルの観察 |
排痰援助 | • 水分摂取促進 • 体位ドレナージ • タッピング |
疲労を避ける 感染予防 |
活動・安静 | • 段階的な活動増加 • 呼吸リハビリテーション • ADL自立支援 |
過度な安静は筋力低下 個人差を考慮 |
口すぼめ呼吸の指導方法
実際にやってみよう!口すぼめ呼吸
- 準備:楽な姿勢で座る
- 吸気:鼻からゆっくり息を吸う(2秒)
- 呼気:口をすぼめて「フー」と息を吐く(4-6秒)
- 比率:吸う:吐く = 1:2の割合
効果:気道内圧を高めて、気道の虚脱を防ぐ

肺炎患者の看護
肺炎は急性疾患の代表例で、迅速で適切な看護が求められます。特に高齢者では重篤化しやすいため注意が必要です。
肺炎の分類と特徴
肺炎の分類 | |||
---|---|---|---|
分類 | 主な原因 | 好発年齢 | 看護のポイント |
市中肺炎 | 肺炎球菌 マイコプラズマ |
全年齢 | 早期治療 水分補給 |
院内肺炎 | 緑膿菌 MRSA |
高齢者 | 感染対策 重症化予防 |
誤嚥性肺炎 | 口腔内細菌 嫌気性菌 |
高齢者 嚥下障害者 |
誤嚥予防 口腔ケア |
肺炎患者の症状とアセスメントポイント
肺炎の主な症状
- 呼吸器症状:咳嗽、喀痰、呼吸困難、胸痛
- 全身症状:発熱、悪寒、倦怠感、食欲不振
- 高齢者の特徴:発熱がない場合も多い、意識障害、食事摂取不良
肺炎患者への具体的な看護
体温管理
解熱剤の使用、クーリング、水分補給による脱水予防
呼吸管理
酸素療法、体位ドレナージ、深呼吸・咳嗽指導
水分・栄養管理
適切な水分摂取、消化の良い食事、栄養状態の維持
感染対策
標準予防策、適切な抗菌薬投与、二次感染予防
安静と段階的活動
急性期は安静、回復期は段階的な活動再開

高齢者肺炎の注意点
- 非典型的症状:発熱がない、咳が少ない
- 見逃しやすい症状:食欲不振、活動性低下、意識レベル低下
- 重症化しやすい:免疫力低下、併存疾患の影響
- 観察ポイント:普段との違い、些細な変化も見逃さない
閉塞性換気障害と拘束性換気障害
スパイロメトリーの結果から、呼吸器疾患のタイプを判断することができます。この分類を理解すると、疾患の理解が深まります。
閉塞性換気障害と拘束性換気障害の違い
換気障害の分類 | ||
---|---|---|
項目 | 閉塞性換気障害 | 拘束性換気障害 |
病態 | 気道が狭くなる 空気が出にくい |
肺が硬くなる 空気が入りにくい |
イメージ | ストローが詰まった状態 息を吐くのが困難 |
硬い風船 息を吸うのが困難 |
代表的疾患 | COPD 気管支喘息 |
肺線維症 胸郭変形 |
検査所見 | %FEV₁.₀ < 70% 残気量↑ |
%肺活量 < 80% 肺活量↓ |
身近な例で理解しよう
閉塞性換気障害(ストローの例):
- ストローに何かが詰まっている状態
- 吸うのは何とかできるが、吐くのが困難
- → COPD患者が息を吐くのに苦労する理由
拘束性換気障害(硬い風船の例):
- 古くて硬くなった風船を膨らませる状態
- 息を吹き込むのに力が必要
- → 肺線維症患者が息を吸うのに苦労する理由

実習で活かせる呼吸器看護のポイント
患者さんとのコミュニケーションのコツ
呼吸困難な患者さんへの接し方
観察のポイント
実習で必ず観察すべきポイント
- 呼吸状態:回数、深さ、リズム、努力性呼吸の有無
- SpO₂値:安静時・活動時の変化
- 皮膚・粘膜の色:チアノーゼの有無
- 喀痰:性状、量、色、においの変化
- 意識レベル:CO₂ナルコーシスの徴候
- 全身状態:疲労感、食欲、睡眠の状況
まとめ:呼吸器看護の本質を理解しよう

呼吸器看護完全攻略ガイド総まとめ
- 基礎理解:呼吸中枢、肺胞換気、胸腔内陰圧のメカニズム
- 酸素療法:器具選択の根拠と適切な流量設定
- 検査理解:スパイロメトリーの意味と臨床応用
- 病態把握:Ⅰ型・Ⅱ型呼吸不全の違いと対応
- 疾患別看護:COPD・肺炎患者への具体的ケア
- 実践技術:患者さんとのコミュニケーションと観察技術
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