【看護学生必見】母性看護学のアセスメントのコツ – 妊娠期編 |90%理解!
看護学生の皆さん、こんにちは!看護学生アドバイザーのかずです。今回は看護学生にとって難しいと感じることの多い「母性看護学のアセスメント」について、特に妊娠期に焦点を当てて詳しく解説していきます。実習前の不安を少しでも解消し、充実した学びにつなげるためのコツを紹介しますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

母性看護学のアセスメントが難しいと感じる理由
母性看護学の実習に向けて準備を始めると、多くの学生が「今までの実習と違う」と感じるのではないでしょうか。それには明確な理由があります。

アセスメントが今までとは大きく変わる点が2つあります。それをしっかり理解することが第一歩です。
1. 問題解決型思考からウェルネス思考への転換
今まで皆さんは患者さんの「問題点」や「異常」を見つけるアセスメントをしてきたと思います。これは「問題解決型思考」と呼ばれるもので、成人看護学や老年看護学などで多く用いられます。
一方、母性看護学では「ウェルネス思考」が重要になります。これは「健康で幸福に生活したい」という対象者の意向を叶えるために、正常な部分や良い部分に着目し、それを伸ばしていくという考え方です。

問題解決型思考とウェルネス思考の違い
- 問題解決型思考: 異常や問題点を見つけて解決する
- ウェルネス思考: 正常な部分や強みを見つけて伸ばす
2. アセスメントの量が多い
母性看護学では、妊娠期・分娩期・産褥期と時期ごとに母体のアセスメントが必要であり、さらに赤ちゃん(胎児・新生児)のアセスメントも加わります。つまり、一度に見るべきポイントが他の領域と比べて圧倒的に多いのです。
しかし安心してください。基本的な考え方をマスターすれば、効率よくアセスメントできるようになります。
母性看護学アセスメントの基本「正常なところを見つけて、伸ばしていく看護をする」
これさえ押さえておけば、アセスメントの方向性が見えてきます!
妊娠期のアセスメントの基本的な考え方
妊娠期のアセスメントを行う際に最も大切なのは、「出産は異常な経過ではなく、自然なプロセス」という視点です。実習で受け持つ妊婦さんのほとんどは正常経過をたどっています。

例えば、母乳が出ることは異常ではなく正常です。その上で、より母乳がよく出るようにするための援助を考えます。これがウェルネス志向のアセスメントです。
妊娠期の区分と各期のアセスメントポイント
妊娠期は大きく3つの時期に分けられます。それぞれの時期で観察するべきポイントが異なるので、しっかり押さえておきましょう。
妊娠期の区分とアセスメントポイント | ||
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時期 | 週数 | 主なアセスメントポイント |
妊娠初期 | 0週~15週 | • つわりの状況と栄養摂取への影響 • 流産のリスク(腹痛や出血の有無) • 異所性妊娠の兆候 • 感染症スクリーニング • 心理社会的評価(妊娠の受容状態など) |
妊娠中期 | 16週~27週 | • 胎児の発育状況(子宮底長、腹囲の測定) • 胎動の自覚 • 妊娠糖尿病スクリーニング • 早産リスク評価 • 体重管理と栄養状態 |
妊娠後期 | 28週~分娩 | • 胎児の位置と発育 • 胎児心拍数モニタリング • 妊娠高血圧症候群の兆候 • 前期破水や常位胎盤早期剥離の兆候 • 分娩準備の状況 • 心理的サポート(分娩への不安など) |

妊娠期の主な合併症と観察ポイント
妊娠期には注意すべき主な合併症があります。代表的なものとして「妊娠高血圧症候群」と「妊娠糖尿病」があります。これらは母子ともに重大な影響を与える可能性があるため、観察ポイントをしっかり押さえておくことが重要です。
1. 妊娠高血圧症候群
妊娠20週以降に起こりやすく、もともと高血圧の症状がなかった人が発症する疾患です。母児への影響が大きく、母体死亡や胎児死亡の原因になることもあります。
妊娠高血圧症候群の基礎知識
- 診断基準: 収縮期血圧140mmHg以上/拡張期血圧90mmHg以上
- 発症率: 全妊婦の約10%
- リスク因子: 初産婦、35歳以上、多胎妊娠、肥満、糖尿病、腎疾患など
- 母体への影響: 子癇、HELLP症候群、腎機能障害、DICなど
- 胎児への影響: 子宮内発育不全、早産、胎児死亡など
妊娠高血圧症候群は早期発見が重要です。以下のポイントを定期的に観察しましょう。
妊娠高血圧症候群の観察ポイント | |
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血圧測定 | • 定期的な測定(家庭血圧の測定も奨励) • 正常値:収縮期血圧<140mmHg、拡張期血圧<90mmHg • 急激な上昇に注意 |
尿検査 | • 尿蛋白の有無(+以上で注意) • 尿量の減少 |
浮腫 | • 部位(顔面、手指、下腿) • 程度(陥凹性の有無) • 経過(朝方軽減するか) |
自覚症状 | • 頭痛 • 視覚異常(かすみ目、閃光など) • 上腹部痛 • 嘔気・嘔吐 |
体重 | • 急激な増加(1週間で500g以上) • 妊娠経過に応じた適切な増加かどうか |
2. 妊娠糖尿病
妊娠すると、胎盤から分泌されるホルモンの影響でインスリンが十分働かない状態になることがあります。これが妊娠糖尿病です。誰にでも起こりうる可能性があるため、定期的な検査と観察が必要です。

妊娠糖尿病の基礎知識
- 診断基準 (75gOGTTにおいて次の基準の1点以上):
- 空腹時血糖値≧92mg/dL
- 1時間値≧180mg/dL
- 2時間値≧153mg/dL
- 発症率: 約7-10%
- リスク因子: 肥満、35歳以上、糖尿病家族歴、既往妊娠での妊娠糖尿病歴など
- 母体への影響: 妊娠高血圧症候群、羊水過多、難産など
- 胎児・新生児への影響: 巨大児、低血糖、黄疸、奇形リスク上昇など
妊娠糖尿病の観察ポイントを以下にまとめました。
妊娠糖尿病の観察ポイント | |
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血糖値 | • 空腹時血糖(目標:70-92mg/dL) • 食後2時間血糖(目標:120mg/dL未満) • HbA1c値 |
尿検査 | • 尿糖 • ケトン体 |
胎児発育 | • 子宮底長の推移 • 超音波検査による推定体重(巨大児:4000g以上) • 羊水量(羊水過多の有無) |
自覚症状 | • 口渇、多飲、多尿 • 倦怠感 • かゆみ • 低血糖症状(冷や汗、動悸、手指振戦など) |
生活習慣 | • 食事内容と摂取時間 • 運動習慣 • ストレス状況 |
妊娠糖尿病は、食事療法と運動療法が主な治療となります。血糖コントロールがうまくいかない場合は、インスリン療法が必要になることもあります。


妊娠期のアセスメントフレームワーク
母性看護学のアセスメントを効率的に行うためには、フレームワーク(枠組み)を活用することが有効です。ここでは実習でも使いやすい妊娠期のアセスメントフレームワークを紹介します。
1. 身体的アセスメント
妊婦健診での身体的アセスメントで見るべきポイントを以下にまとめました。
妊婦健診での身体的アセスメントポイント | ||
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観察項目 | 正常範囲 | アセスメントのポイント |
体重 | • 妊娠全期を通じて7~12kg増加 • 週0.3~0.5kg程度の増加 |
• BMIに応じた適切な増加かどうか • 急激な増加(浮腫、妊娠高血圧症候群の可能性) • 増加不良(栄養不足、胎児発育不全の可能性) |
血圧 | • 収縮期血圧<140mmHg • 拡張期血圧<90mmHg |
• 測定環境(安静、適切な姿勢) • 妊娠前と比較した変動 • 経時的変化(特に20週以降の上昇傾向) |
子宮底長 | • 妊娠週数に応じた長さ • 24週で約24cm • 36週で約36cm |
• 週数±2cmの範囲内か • 成長曲線に沿った発育か • 急激な増加(多胎、羊水過多の可能性) • 発育不良(胎児発育不全の可能性) |
腹囲 | • 妊娠週数に応じた増加 | • 急激な増加(羊水過多、多胎妊娠の可能性) • 増加不良(胎児発育不全の可能性) |
浮腫 | • 下肢の軽度浮腫は生理的 • 夕方に増悪し、翌朝には軽快 |
• 部位(顔面・手指は要注意) • 程度(陥凹性、非陥凹性) • 日内変動の有無 • 血圧上昇や尿蛋白との関連 |
尿検査 | • 尿蛋白(-) • 尿糖(-) • 尿ケトン体(-) |
• 尿蛋白(+)は妊娠高血圧症候群の可能性 • 尿糖(+)は妊娠糖尿病の可能性 • 尿ケトン体(+)は飢餓状態の可能性 |
胎児心音 | • 110~160回/分 • 規則的 |
• 徐脈(110回/分未満) • 頻脈(160回/分以上) • 不整の有無 • 胎動に伴う一過性頻脈の有無 |
胎動 | • 18~20週頃から自覚 • 1日30回以上 |
• 胎動の自覚の有無 • 回数の増減 • パターンの変化(胎動減少は胎児機能不全の可能性) |

2. 心理社会的アセスメント
身体的な観察と同時に、心理社会的側面のアセスメントも母性看護学では重要です。特に以下のポイントに注目しましょう。
心理社会的アセスメントポイント | |
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アセスメント項目 | 観察ポイント |
妊娠の受容 | • 妊娠の計画性(計画・望んだ妊娠か) • 妊娠に対する感情表現 • 母親役割への適応状況 • ボディイメージの変化に対する受け止め方 |
家族関係 | • パートナーとの関係性 • パートナーからのサポート状況 • 家族構成と協力体制 • 実父母・義父母との関係 • ドメスティックバイオレンスのリスク |
妊娠・出産に対する不安 | • 不安の内容(胎児、分娩、育児など) • 不安の程度 • ストレス対処方法 • 気分の変動(抑うつ傾向など) • 睡眠状態 |
社会経済的状況 | • 就労状況(職種、勤務形態、産休・育休の取得予定) • 経済的基盤 • 住環境(育児環境として適切か) • 社会的サポートネットワーク(友人、地域など) |
出産・育児の準備状況 | • 妊婦教室などへの参加状況 • 育児用品の準備状況 • 分娩施設の決定 • バースプランの有無 • 育児方針の検討状況 |
生活習慣 | • 食習慣(栄養バランス、食事回数、嗜好) • 休息・睡眠パターン • 活動・運動習慣 • 喫煙・飲酒の有無 • セルフケア能力 |

妊娠期のアセスメントのステップと書き方のコツ
実習記録では、集めたデータをどのように解釈し、どのように記録すればよいのか悩むことも多いと思います。ここでは、妊娠期のアセスメントのステップと記録の書き方のコツをご紹介します。
妊娠期のアセスメントステップ
妊娠期アセスメントの5ステップ
- 情報収集: バイタルサイン、子宮底長、腹囲、血液検査等の客観的データと、本人の訴え等の主観的データを集める
- 正常・異常の判断: 収集したデータが正常範囲内かどうかを判断する
- データの分析・解釈: データの意味を解釈し、関連づける
- 強み・ニーズの特定: 妊婦さんの強みとニーズを特定する
- 看護援助の方向性決定: 強みを活かしたり、ニーズを満たすための看護援助を考える
アセスメント記録の書き方のコツ
母性看護学の特徴であるウェルネス思考を活かしたアセスメント記録の書き方を紹介します。
母性看護学アセスメント記録の書き方 | |
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ポイント | 具体的な書き方と例 |
正常であることの根拠を示す | 悪い例:「血圧128/76mmHgで正常範囲内である」
良い例:「血圧128/76mmHgであり、妊娠高血圧症候群の診断基準(140/90mmHg以上)を下回っているため、現時点では正常な経過と判断できる。また、妊娠前の血圧と比較しても大きな変動はない」 |
複数のデータを関連づける | 悪い例:「子宮底長34cm、腹囲88cm、胎児推定体重2500gである」
良い例:「妊娠34週で子宮底長34cm、腹囲88cmであり、妊娠週数に応じた正常範囲内である。胎児推定体重2500gも週数相当(±10%以内)であるため、胎児発育も順調と考えられる」 |
強みを明確にする | 悪い例:「初産婦で出産に対する不安がある」
良い例:「初産婦で出産に対する不安はあるが、妊婦教室に積極的に参加し、分娩に関する知識を得ようとする姿勢が見られる。また、パートナーからのサポートも得られており、不安に対処するための強みとなっている」 |
ニーズと支援の方向性を示す | 悪い例:「妊娠糖尿病があり、血糖コントロールが必要」
良い例:「妊娠糖尿病と診断され、食後2時間血糖値が140mg/dL前後と目標値(120mg/dL未満)を上回っている。しかし栄養指導を真摯に受け止め、食事内容の見直しに前向きに取り組んでいる。今後も自己血糖測定の継続と食習慣の改善を支援することで、より良い血糖コントロールにつながると考えられる」 |
本人の言葉を引用する | 悪い例:「胎動を感じることに喜びを感じている」
良い例:「『赤ちゃんが動くたびに、本当に命を授かったんだなって実感します』と胎動を感じる喜びを表現している。このことから、母親としての自覚が芽生え、胎児との愛着形成が順調に進んでいると考えられる」 |


実習を効率的に進めるためのポイント
実習中は時間との戦いになることも多いと思います。以下に、妊娠期のアセスメントを効率的に進めるためのポイントをまとめました。
実習を効率的に進めるためのポイント
- 事前学習の充実: 妊娠期の生理的変化や主な合併症について予習しておく
- 情報収集の優先順位付け: 重要度の高い情報から収集する
- チェックリストの活用: 観察項目をリスト化して漏れをなくす
- タイムマネジメント: 一日のスケジュールを立てて計画的に進める
- メモの活用: ポケットサイズのメモ帳を持ち歩き、気づいたことをすぐメモする
- フレームワークの活用: アセスメントの枠組みを活用して効率的に考える

失敗しないための実習チェックリスト
妊娠期の実習で失敗しないために、以下のチェックリストを活用してみてください。実習開始前と毎日の実習後に確認することで、効率的に学習を進めることができます。
妊娠期実習チェックリスト | |
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実習前の準備 | □ 妊娠期の生理的変化について復習 □ 妊婦健診の流れと観察ポイントの確認 □ 妊娠高血圧症候群と妊娠糖尿病の病態理解 □ 産科用語の復習 □ レオポルド触診法の手順確認 □ 子宮底長・腹囲測定の方法確認 |
身体的観察項目 | □ バイタルサイン(血圧、脈拍、体温) □ 体重増加状況 □ 子宮底長・腹囲 □ 浮腫の有無と部位 □ 尿検査結果(蛋白、糖、ケトン体) □ 血液検査結果(貧血、血糖値など) □ 胎児心音・胎動 □ 超音波検査結果 |
心理社会的観察項目 | □ 妊娠の受容状況 □ 家族関係(特にパートナーとの関係) □ 出産・育児に対する不安の内容と程度 □ 社会的サポート状況 □ 就労状況と産後の予定 □ 経済状況 □ 出産・育児準備の進捗状況 |
生活習慣の観察 | □ 食事内容と回数 □ 水分摂取量 □ 活動・運動状況 □ 休息・睡眠状況 □ 排泄習慣 □ セルフケア能力 |
記録作成のポイント | □ 主観的情報と客観的情報を区別 □ データの正常・異常の判断根拠を記載 □ 複数のデータを関連づけて解釈 □ 妊婦さんの強みを明記 □ ウェルネス志向のアセスメント □ 具体的な看護援助の方向性を示す |
妊娠期によく見られるマイナートラブルと看護ケア
妊娠期には様々なマイナートラブルが現れることがあります。これらは異常というわけではなく、妊娠に伴う生理的な変化であることが多いですが、妊婦さんの日常生活に影響を与えることもあります。そのため、適切なアセスメントとケアが必要です。
主な妊娠期マイナートラブルと看護ケア
妊娠期マイナートラブルと看護ケア | ||
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マイナートラブル | メカニズム | アセスメントとケア |
つわり | • ホルモン(hCG)の変化 • 心理的要因 • 妊娠6~14週に多い |
アセスメント: • 症状の程度(軽度、中等度、重症) • 食事・水分摂取状況 • 体重変化 • 脱水症状の有無ケア: • 少量頻回の食事 • 刺激の少ない食事 • 冷たい飲み物の摂取 • 生姜、ビタミンB6の活用 • 悪化時は医療機関受診 |
腰痛・恥骨痛 | • リラキシンによる関節弛緩 • 体重増加 • 姿勢変化 • 妊娠中期~後期に多い |
アセスメント: • 痛みの部位と程度 • 日常生活への影響 • 姿勢や動作の観察ケア: • 適切な姿勢の指導 • 骨盤ベルトの活用 • 温罨法 • 適度な休息 • マッサージ • 無理のない範囲での運動 |
便秘 | • プロゲステロンによる腸管運動の低下 • 子宮の拡大による腸管圧迫 • 鉄剤服用の影響 • 運動不足 |
アセスメント: • 排便回数・性状 • 水分・食物繊維の摂取状況 • 運動習慣 • 腹部膨満感の有無ケア: • 十分な水分摂取 • 食物繊維の摂取 • 適度な運動 • 排便習慣の確立 • 朝食後のトイレ習慣 • 強い下剤の使用は避ける |
頻尿 | • 子宮の拡大による膀胱圧迫 • 腎血流量増加 • 妊娠初期と後期に多い |
アセスメント: • 排尿回数と量 • 排尿時痛の有無 • 尿検査結果(感染の有無) • 日常生活への影響ケア: • 夜間の水分制限(就寝2時間前まで) • 外出時のトイレ場所の把握 • カフェイン摂取の制限 • 骨盤底筋トレーニング • 尿路感染予防の衛生指導 |
睡眠障害 | • 身体的不快感 • 胎動 • 頻尿 • 心理的不安 • 妊娠後期に多い |
アセスメント: • 睡眠時間と質 • 不眠の原因 • 日中の眠気と活動への影響 • 疲労度ケア: • 快適な睡眠環境の整備 • リラクセーション法 • 側臥位での睡眠 • 就寝前のルーティン確立 • 昼寝の活用 • 睡眠薬の使用は避ける |
下肢のむくみ | • 子宮による下大静脈圧迫 • 静脈還流の低下 • 妊娠による水分貯留 • 妊娠後期に多い |
アセスメント: • むくみの部位と程度 • 日内変動の有無 • 非対称性の有無 • 血圧、尿蛋白との関連ケア: • 長時間の立ち仕事を避ける • 横になる際の左側臥位 • 下肢挙上 • 弾性ストッキングの活用 • マッサージ • 過度な塩分制限は不要 |

妊娠期のアセスメントの事例
ここでは、妊娠期のアセスメントの具体例を紹介します。これを参考に、実習でのアセスメントに活かしてください。
アセスメント事例:Aさん(29歳・初産婦・妊娠28週)【情報収集】
- 身長160cm、妊娠前体重52kg(BMI 20.3)
- 現在体重58kg(増加6kg)
- 血圧120/74mmHg、脈拍78回/分、体温36.6℃
- 子宮底長28cm、腹囲82cm
- 尿検査:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)
- 胎児心拍数142回/分、胎動良好
- 超音波検査:胎児推定体重1120g(週数相当)
- 下肢に軽度の浮腫あり、夕方に増悪し朝には軽減する
- 就労中(事務職)、妊娠34週で産休予定
- 「最近お腹が大きくなって腰が痛いです。夜も何度もトイレに起きるので、睡眠不足です」
- 「初めての出産で不安ですが、夫も両親も協力的です」
【アセスメント例】
Aさんは妊娠28週の初産婦である。体重増加は妊娠前から6kgであり、BMI標準(20.3)の妊婦の推奨体重増加範囲(28週時点で約5~7kg)内にあるため、適切な増加と判断できる。血圧120/74mmHgは正常範囲であり、妊娠高血圧症候群の基準(140/90mmHg以上)を下回っている。尿検査でも蛋白(-)であり、現時点では妊娠高血圧症候群の兆候は認められない。
子宮底長28cmは妊娠週数(28週)に一致しており、胎児発育は順調と考えられる。胎児心拍数142回/分は正常範囲(110~160回/分)内であり、胎動も良好とのことから、胎児well-beingが保たれていると判断できる。
下肢の浮腫については、夕方に増悪し朝には軽減するという日内変動があることから生理的浮腫と考えられる。血圧も正常で尿蛋白も陰性であることから、病的な浮腫ではないと判断できる。
腰痛と頻尿による睡眠障害を訴えているが、これらは妊娠後期によく見られるマイナートラブルである。特に腰痛は子宮の増大による姿勢の変化やリラキシンによる関節弛緩、頻尿は子宮による膀胱圧迫が原因と考えられる。
心理社会的側面では、初産婦で出産への不安はあるものの、夫や両親のサポートが得られており、社会的支援が充実している強みがある。また、就労中ではあるが妊娠34週での産休が予定されており、出産に向けた準備期間が確保できる見通しである。
【看護援助の方向性】
- 腰痛緩和のための姿勢指導、骨盤ベルトの活用、休息方法の工夫
- 良質な睡眠のための環境調整(側臥位での睡眠、就寝前の水分制限など)
- 初産婦の不安軽減のための情報提供(出産準備教室の紹介、分娩の流れの説明など)
- 下肢浮腫の緩和方法(休息時の足部挙上、マッサージ方法など)
- 家族を含めた出産・育児準備のサポート

まとめ:母性看護学のアセスメントを成功させるコツ
これまで紹介してきた妊娠期のアセスメントのポイントを踏まえ、最後に母性看護学実習を成功させるためのコツをまとめます。
母性看護学アセスメントを成功させる7つのコツ
- 思考の転換: 問題解決型思考からウェルネス思考への切り替え
- 正常の理解: 妊娠による生理的変化の正常範囲を理解する
- 異常の早期発見: 妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の兆候を見逃さない
- 多角的な視点: 身体面だけでなく心理社会的側面も含めて総合的にアセスメント
- 強みの活用: 妊婦さんの持つ力(強み)を見つけ、それを伸ばす支援を考える
- 個別性の重視: 一人ひとりの状況や背景を考慮したアセスメント
- 根拠に基づく記録: なぜ正常と判断したのか、なぜそのケアが適切なのかの根拠を明確に

妊娠期の記事はここまでですが、今後「分娩期編」「産褥期編」もご紹介していく予定です。母性看護学の実習を控えている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
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