【看護学生必見】小児看護実習を乗り切るためのポイント
看護学生の皆さん、こんにちは!看護学生アドバイザーのかずです。今回は多くの学生さんが不安を感じる「小児看護実習」について、実習を乗り切るための具体的なポイントを解説していきます。子どもとの関わり方から観察ポイント、家族への対応まで、実践的な内容をお届けしますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。


小児看護実習の基本と目的
まずは小児看護実習の基本的な目的と概要を理解しましょう。実習の目的をしっかり理解することで、何を学ぶべきかが明確になります。
小児看護実習で学ぶこと
小児看護実習では以下のような内容を学びます:
- 子どもの成長発達の理解:年齢や発達段階に応じた特徴を理解する
- 健康状態に応じた看護実践:子どもの疾患と観察ポイントを学ぶ
- 家族を含めた看護の展開:子どもだけでなく家族全体をケアする視点を養う
- 小児看護の特殊性の理解:大人との違いを理解した看護を実践する

小児看護実習の特徴
- 大人と違い、成長発達の途上にある対象者を看護する
- 言語的コミュニケーションが難しい場合がある
- 親(養育者)との関わりも重要な看護の一部
- 遊びを通したケアが重要になる
- 子どもの権利を尊重した関わりが求められる
小児看護実習のこのポイントは押さえよう!
小児看護実習を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを押さえておくことで、実習がスムーズに進みます。

小児看護実習では、以下の4つのポイントを特に意識して観察・ケアを行っていきましょう。
1. 発達段階に応じた観察とアセスメント
子どもは年齢によって、できることとできないことが大きく異なります。発達段階を理解し、その子どもに合わせたケアを提供することが重要です。
観察のポイント:
- バイタルサインは年齢によって正常値が異なる
- 言語発達:発語数や会話の内容
- 運動機能:歩行、描画、食事動作など
- 遊びの様子:一人遊び、集団遊びなど
2. アニミズムの理解と活用
小児期特有のアニミズム(物に命があると考える特徴)を理解し、ケアに活用することが大切です。
具体的な活用例:
- 処置前の説明:人形やぬいぐるみを使って説明
- 点滴の説明:「お薬さんが体の中を探検する電車に乗って行くよ」
- 聴診器の使用:「どんな音がするか、くまさんと一緒に聞いてみよう」

3. プレパレーションの実施
子どもの理解度に合わせた説明と心理的準備が必要不可欠です。
年齢別プレパレーションのポイント:
- 乳児期:親を通じた説明、スキンシップを多く
- 幼児期:絵本やおもちゃを使用した説明
- 学童期:図や写真を使った具体的な説明
- 思春期:大人と同様の丁寧な説明
プレパレーションのポイントプレパレーションは、必ずしもうまくいかないこともあります。しかし、諦めずに何度も試みることで、その子に合った方法が見つかることが多いです。また、子どもの反応を観察しながら臨機応変に対応することも大切です。
4. 家族を含めた看護の展開
子どもの入院は家族全体に影響を与えます。以下の視点を持って関わることが重要です:
家族への支援ポイント:
- 面会時の家族の表情や態度の観察
- きょうだいへの影響も考慮
- 家族の生活リズムへの配慮
- 退院後の生活を見据えた指導

パート2:発達段階に応じた観察とアセスメント
小児看護実習では、子どもの発達段階に合わせた観察とアセスメントが最も重要です。子どもは年齢によって身体的・精神的特徴が大きく異なるため、各発達段階の特徴を理解しておくことが不可欠です。


発達段階別の観察ポイント
子どもの発達段階は大きく分けて、新生児期・乳児期・幼児期・学童期・思春期に分類されます。それぞれの時期によって観察のポイントが異なります。
発達段階別観察ポイント | ||
---|---|---|
発達段階 | 身体的特徴 | 観察ポイント |
乳児期 (0〜1歳) |
• 急速な身体発育 • 原始反射から意図的動作へ • 体重:出生時の2〜3倍に |
• 原始反射の消失(モロー反射、把握反射など) • 首すわり(3〜4ヶ月)、お座り(7〜8ヶ月)、つかまり立ち(10ヶ月頃) • 人見知り(7〜8ヶ月頃) • 喃語から単語への発達 • 親子の愛着形成 |
幼児期前期 (1〜3歳) |
• 歩行確立 • 排泄機能の発達 • 言語発達の加速 |
• 歩行の安定性(1歳前後) • トイレトレーニングの段階 • 語彙数(2歳で約200語程度) • 自我の芽生え(「イヤ」の表現) • 指さし行動、模倣行動 |
幼児期後期 (3〜6歳) |
• 運動機能の向上 • 想像力の発達 • 社会性の発達 |
• 片足立ち、ジャンプなどのバランス能力 • お絵かきの内容(人物画など) • ごっこ遊びの内容 • 友達との関わり方 • アニミズム的思考(おもちゃに話しかけるなど) |
学童期 (6〜12歳) |
• 永久歯への交換 • 論理的思考の発達 • 集団行動の重視 |
• 学習能力と集中力 • 友人関係(グループ形成) • ルールのある遊びへの参加 • 歯の生え変わり状況 • 自己概念の発達 |
思春期 (12歳〜) |
• 第二次性徴 • 急速な身長増加 • アイデンティティの形成 |
• 身体的成熟度(性徴の出現) • プライバシーへの配慮 • 自己肯定感と心理的安定 • 親からの自立と依存のバランス • 将来への関心 |

ピアジェの認知発達理論を活用しよう
小児の認知発達を理解するための有用な理論として、ピアジェの認知発達理論があります。各段階の特徴を理解することで、子どもの理解度に合わせた関わりができるようになります。
ピアジェの認知発達段階 | |||
---|---|---|---|
発達段階 | 年齢 | 特徴 | 看護上の留意点 |
感覚運動期 | 0~2歳 | • 感覚と運動を通して外界を理解 • 対象の永続性の獲得 • 目的のある行動の出現 |
• 視覚的・触覚的な刺激を活用 • スキンシップを多く • 反復する遊びが効果的 |
前操作期 | 2~7歳 | • 象徴機能の発達 • 自己中心的思考 • アニミズム • 直感的思考 |
• 絵本やごっこ遊びの活用 • 具体物を用いた説明 • 短く簡潔な言葉で説明 |
具体的操作期 | 7~11歳 | • 論理的思考の芽生え • 可逆性の理解 • 保存の概念の獲得 |
• 論理的説明が可能 • 図や模型を使った説明 • ルールのある遊びの活用 |
形式的操作期 | 11歳~ | • 抽象的思考が可能 • 仮説演繹的思考 • 未来志向的思考 |
• 抽象的な説明が可能 • 自己決定を尊重 • 将来への見通しを含めた説明 |

### 成長発達のアセスメントチェックリスト
実習中に子どもの成長発達をアセスメントする際に役立つチェックリストです。このリストを参考に観察することで、効率的に子どもの発達状況を評価できます。
小児看護実習 成長発達アセスメントチェックリスト

このチェックリストを活用して、実習中の子どもの発達状況を評価してみましょう。この評価をもとに、その子に合わせた発達支援やケアを計画することができます。
発達検査の活用法
発達検査は子どもの成長発達を客観的に評価するための重要なツールです。実習中にこれらの検査に触れる機会があれば、積極的に学んでおきましょう。
主な発達検査 | |||
---|---|---|---|
検査名 | 対象年齢 | 評価領域 | 実習での活用法 |
デンバー式発達スクリーニング検査 | 0~6歳 | • 個人-社会性 • 微細運動-適応 • 言語 • 粗大運動 |
• 初期アセスメントとして • 経時的変化の把握 • 家族への説明資料として |
新版K式発達検査 | 0~10歳 | – 認知・適応領域 – 言語・社会領域 |
– 詳細な発達評価 – 療育の必要性判断 – 発達の質的側面の評価 |
遠城寺式乳幼児分析的発達検査 | 0~5歳 | – 運動 – 社会性 – 言語 |
– 各発達領域のバランス把握 – 発達の偏りの発見 – 簡易評価 |
乳幼児精神発達質問紙(KIDS) | 0~6歳 | – 運動 – 操作 – 理解言語 – 表出言語 – 社会性 |
– 家族からの情報収集 – 家庭での様子の把握 – 親の子どもへの理解度確認 |

発達評価のポイントまとめ
- 教科書的な発達指標は目安として活用する
- 個人差や環境要因を考慮した評価を行う
- 遊びを通した自然な観察を心がける
- 親(養育者)からの情報を大切にする
- 入院による一時的な退行現象も理解しておく
- その子の「強み」に着目したアセスメントを行う
発達段階に応じた観察とアセスメントは、小児看護実習の基本中の基本です。子どもたちの成長発達をしっかり理解し、適切なケアにつなげていきましょう。
パート3:子どもとの効果的なコミュニケーション術
小児看護実習で最も難しく感じるのが、子どもとのコミュニケーションです。年齢によって言語発達やコミュニケーション能力が大きく異なるため、それぞれの発達段階に合わせたアプローチが必要になります。


年齢別コミュニケーションの取り方
子どもの年齢に応じて、コミュニケーションの方法を変えることが大切です。それぞれの年齢に適した声かけや接し方を身につけましょう。
1. 乳児期(0~1歳)の声かけ
基本的な接し方:
- スキンシップを大切に
- 優しくゆっくりとした口調
- 表情豊かに
- 必ず保護者の許可を得てから触れる
具体的な声かけ例:
- 「よしよし、大丈夫だよ~」
- 「○○ちゃん、えらいね~」
- 「いないいないばぁ!」

2. 幼児期(1~6歳)の声かけ
基本的な接し方:
- 目線を合わせる
- 具体的な言葉を使う
- 選択肢を示す
- 褒める機会を多く作る
具体的な声かけ例:
- 「○○くんは、どっちがいいかな?」
- 「わぁ!上手にできたね!」
- 「痛かったね。泣いてもいいよ」
幼児期の注意点幼児期は「自分でやりたい」気持ちが強い時期です。できるだけ選択肢を示して、自分で決められる機会を作ってあげましょう。「これをしなさい」ではなく「これとこれ、どっちがいい?」と聞くことで、子どもの自主性を尊重できます。
3. 学童期(6~12歳)の声かけ
基本的な接し方:
- 理由を説明する
- 頑張りを認める
- プライバシーに配慮
- 年齢相応の言葉を使う
具体的な声かけ例:
- 「なぜそうするのか、説明させてね」
- 「○○さんの意見を聞かせてくれる?」
- 「今の気持ちを教えてくれる?」
4. 思春期(12歳以上)の声かけ
基本的な接し方:
- 敬語を基本に
- プライバシーを重視
- 自己決定を尊重
- 大人として扱う
具体的な声かけ例:
- 「〇〇さんは、どう思われますか?」
- 「ご意見をお聞かせください」
- 「一緒に考えていきましょう」

声かけの際の注意点
タイミング
- 処置の前:心の準備ができる余裕を持って
- 処置中:励ましの言葉を
- 処置後:頑張りを認める言葉を
禁止すべき声かけ
- 「痛くないよ」→痛いのに否定される
- 「泣かないの」→感情表現を抑制する
- 「いい子にして」→過度なプレッシャー

プレパレーションの実際
プレパレーションとは、子どもが医療処置や検査を受ける前に、その子の発達段階に合わせて説明し、心の準備をしてもらうことです。これは小児看護において非常に重要な技術です。
年齢別プレパレーション方法 | ||
---|---|---|
年齢 | 効果的な方法 | 具体例 |
乳児期 (0〜1歳) |
– 親を通じた説明 – 保護者の同席 – スキンシップ – 優しい声かけ |
– 「お母さんに抱っこしてもらいながら、お熱を測るね」 – 「お父さんの手を握っていてね」 – 処置の直前に簡単に説明 |
幼児期前期 (1〜3歳) |
– 人形やぬいぐるみの活用 – 簡単な言葉での説明 – 保護者の同席 – ごっこ遊び |
– 「くまさんのお腹にお薬を入れるね~」 – 「チックンする前に、ぬいぐるみさんにやってみよう」 – 処置の5〜10分前に説明 |
幼児期後期 (3〜6歳) |
– 絵本や紙芝居 – 実際の医療器具の紹介 – 選択肢の提供 – アニミズムの活用 |
– 「お薬の電車がお腹の中を探検するよ」 – 「注射器の中の水が体の中に入って、バイキンと戦ってくれるんだよ」 – 処置の15〜30分前に説明 |
学童期 (6〜12歳) |
– 図や写真を使った説明 – 体の仕組みの簡単な説明 – 質問への対応 – 処置の理由説明 |
– 「この注射は筋肉に薬を入れるんだよ。図で見てごらん」 – 「熱を下げるために、お薬が必要なんだよ」 – 処置の数時間前に説明 |
思春期 (12歳〜) |
– 大人と同様の説明 – プライバシーへの配慮 – 自己決定権の尊重 – 質問を促す |
– 「この薬は〇〇という働きがあります」 – 「何か質問はありますか?」 – 「一緒に処置の時間を決めましょう」 – 処置の前日または数時間前に説明 |

プレパレーションの5つのステップ
- 情報収集:子どもの発達段階、理解力、不安の程度を把握
- 環境設定:静かで落ち着いた場所で、十分な時間をとる
- 説明:発達段階に合わせた方法で、分かりやすく説明
- 子どもの反応の確認:理解できているか、質問はないか確認
- 評価・フィードバック:処置後に振り返り、次回に活かす
遊びを通したアプローチ
子どもとのコミュニケーションには、遊びを活用することが非常に効果的です。遊びは子どもの自然な表現方法であり、信頼関係を築くための重要なツールになります。


年齢別おすすめの遊び
子どもの年齢に応じた遊びを取り入れることで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
年齢別おすすめの遊び | ||
---|---|---|
年齢 | おすすめの遊び | ねらい・効果 |
乳児期 (0〜1歳) |
– いないいないばぁ – 手遊び歌 – ガラガラなどの音の出るおもちゃ – タッチ遊び |
– 安心感の形成 – 視覚・聴覚の刺激 – スキンシップによる信頼関係構築 – 情緒の安定 |
幼児期前期 (1〜3歳) |
– 絵本の読み聞かせ – ぬいぐるみを使った遊び – はめ込みパズル – ブロック遊び |
– 言語発達の促進 – 象徴機能の発達 – 細かい動作の練習 – 想像力の発達 |
幼児期後期 (3〜6歳) |
– ごっこ遊び(お医者さんごっこなど) – お絵かき・粘土遊び – 簡単なカードゲーム – 人形劇 |
– 役割理解の促進 – 創造性の発達 – ルールの理解 – 感情表現の促進 |
学童期 (6〜12歳) |
– ボードゲーム – クイズ・なぞなぞ – 工作 – カードゲーム |
– 社会性の発達 – 思考力・判断力の向上 – 達成感の体験 – 言語能力の向上 |
思春期 (12歳〜) |
– 対話型の活動 – ビデオゲーム・スマホゲーム – 創作活動(作文・日記など) – 音楽鑑賞 |
– 自己表現の促進 – 興味関心の共有 – アイデンティティの形成 – リラクゼーション効果 |
遊びを通したコミュニケーションの注意点
- 子どもの体調や気分に配慮する
- 強制せず、子どものペースを尊重する
- 安全面に十分注意する(小さな部品、感染予防など)
- 子どもの好みや興味を把握して遊びを選ぶ
- 遊びながらも観察を怠らない

子どもとのコミュニケーションは、看護師として最も重要なスキルの一つです。言葉だけでなく、表情や身振り、そして遊びを通して子どもの心に寄り添うことで、信頼関係を築き、効果的なケアにつなげることができます。
パート4:小児によく見られる疾患と観察ポイント
小児看護実習では、子どもの発達段階だけでなく、小児によく見られる疾患とその観察ポイントを理解することも重要です。小児は成人とは異なる生理的特徴を持ち、疾患の現れ方や症状の進行も異なることがあります。


小児のバイタルサインの特徴
小児のバイタルサインは年齢によって正常値が異なります。成人と比較して、一般的に脈拍数や呼吸数は多く、血圧は低い傾向にあります。
年齢別バイタルサインの正常値 | ||||
---|---|---|---|---|
年齢 | 体温(℃) | 脈拍(回/分) | 呼吸(回/分) | 血圧(mmHg) |
新生児 | 36.6-37.2 | 120-160 | 30-60 | 60-90/40-60 |
乳児 | 36.7-37.3 | 100-140 | 25-40 | 80-100/50-70 |
幼児 | 36.5-37.2 | 90-130 | 20-30 | 90-110/60-80 |
学童 | 36.2-37.0 | 70-110 | 15-25 | 100-120/60-80 |
思春期 | 36.0-37.0 | 60-100 | 12-20 | 110-130/65-85 |

バイタルサイン測定の注意点
- 年齢に合わせた正常値を把握しておく
- 測定前に子どもの状態を安定させる(泣いていると数値が変わる)
- 可能な限り同じ条件で測定する(比較のため)
- 遊びの要素を取り入れた測定を工夫する
- 子どもの発達段階に合わせた説明を行う
主な小児疾患と観察ポイント
小児期によく見られる疾患とその観察ポイントについて理解しておきましょう。特に頻度の高い呼吸器疾患、感染症、消化器疾患を中心に解説します。
1. 呼吸器系疾患
① 気管支喘息
主な症状:
- 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)
- 咳嗽(特に夜間から早朝に悪化)
- 呼吸困難
- 胸部の引き込み
観察ポイント:
- 呼吸音(喘鳴の程度、左右差)
- 呼吸困難の程度(会話の可否、活動制限)
- 呼吸数と呼吸パターン
- SpO₂値の変動
- 誘因となるアレルゲンの有無
看護のポイント:
- 環境整備:アレルゲン除去、適切な温度・湿度管理
- 発作時の対応:安楽な体位の工夫、吸入介助
- 家族指導:服薬管理、生活管理方法
② RSウイルス感染症
主な症状:
- 鼻汁、咳嗽
- 発熱
- 哺乳力低下
- 呼吸困難(特に乳児)
観察ポイント:
- 呼吸状態(陥没呼吸、鼻翼呼吸)
- SpO₂値
- 哺乳量や食事摂取量
- 体温変動
- 全身状態(活気、顔色)

2. 感染症
① 手足口病
主な症状:
- 手掌、足底、口腔内の水疱性発疹
- 軽度の発熱
- 食欲不振(口内炎による痛み)
観察ポイント:
- 発疹の部位と性状
- 口腔内の状態
- 水分・食事摂取量
- 全身状態
② 溶連菌感染症
主な症状:
- 高熱(38〜39℃)
- 咽頭発赤、扁桃腺の腫脹
- いちご舌
- 発疹(猩紅熱型)
観察ポイント:
- 発熱の程度と持続期間
- 咽頭の状態
- 皮膚の発疹
- 食事・水分摂取状況
- 抗菌薬の効果

小児感染症の隔離と感染対策
- 手指衛生:感染対策の基本。処置の前後に必ず実施
- 個室管理:水痘、麻疹、流行性耳下腺炎など空気感染するものは個室管理
- コホート隔離:同じ感染症の患者を同室にする方法
- 標準予防策:全ての患者に対して実施する基本的な対策
- 感染経路別予防策:空気感染、飛沫感染、接触感染の経路に応じた対策
3. 消化器系疾患
① 急性胃腸炎
主な症状:
- 嘔吐
- 下痢
- 発熱
- 腹痛
- 食欲不振
観察ポイント:
- 便の性状(色、量、回数、粘液・血液の有無)
- 嘔吐の頻度と量
- 脱水症状(皮膚ツルゴール、涙、尿量、口腔粘膜湿潤度)
- 活気、意識状態
- 水分・食事摂取量

② 腸重積
主な症状:
- 間欠的な激しい腹痛(啼泣と緩解を繰り返す)
- 嘔吐
- 血便(カレー状や苺ゼリー状)
- 腹部腫瘤触知
観察ポイント:
- 腹痛の性質と持続時間
- 嘔吐の有無と性状
- 便の性状(特に血液の混入)
- 腹部の状態(膨満感、腫瘤の有無)
- 全身状態(顔色、活気)
看護のポイント:
- 症状観察:腹部症状、全身状態の変化
- 検査・処置の介助:注腸造影検査の準備と介助
- 術後管理:疼痛管理、腹部症状の観察
症状を伝えられない子どもの観察のコツ
小さな子どもは自分の症状をうまく伝えられないことが多いため、非言語的な観察が特に重要になります。
1. 啼泣の観察
子どもの泣き方から、症状や状態を推測することができます。
- 空腹時の泣き方:リズミカルな泣き方、口を動かす、指しゃぶりなど
- 疼痛時の泣き方:激しく持続的な泣き方、体を硬直させる
- 機嫌が悪い時の泣き方:ぐずぐずした泣き方、なだめると落ち着く
- 病的な泣き方:弱々しい泣き声、うめき声、高音の泣き声など
2. 顔色・表情の観察
顔色や表情から、全身状態や苦痛の程度を判断します。
- 顔色:蒼白(貧血、ショック)、チアノーゼ(低酸素状態)、紅潮(高熱)
- 表情:苦痛様顔貌、無欲様顔貌、表情の乏しさなど
- 目の動き:視線の合致、追視、瞳孔の大きさと対光反射
3. 体動の観察
子どもの体の動きや姿勢から、病態を推測することができます。
- 異常な体動:けいれん、振戦、ひきつけなど
- 活動量:低下(重症感染症、脱水)、興奮(高熱、疼痛)
- 姿勢:異常姿勢、痛みを避ける姿勢、体を丸める姿勢など

症状を伝えられない子どもの観察ポイント
- 「いつもと違う」サインを見逃さない
- 母親(養育者)からの情報を重視する
- 非言語的サインに注目する(表情、体動、啼泣など)
- 慣れた環境での自然な状態を観察する
- 観察は複数回行い、経時的変化をとらえる
- 観察結果は具体的に記録する


小児の疾患と観察ポイントを理解することで、適切なアセスメントとケアにつなげることができます。特に言葉で症状を表現できない小さな子どもの観察は、看護師の観察力が試されます。丁寧に観察し、些細な変化も見逃さないようにしましょう。
家族を含めた看護の展開
小児看護の特徴の一つは、子どもだけでなく「家族」も看護の対象となることです。特に親(養育者)は子どもの健康管理の中心的役割を担っており、親との協働なしに効果的な看護は提供できません。


母親(養育者)からの情報収集のコツ
小児の場合、特に低年齢児では、子ども自身からの情報収集には限界があります。そのため、日常的に子どもと接している母親(養育者)からの情報は非常に貴重です。
母親から収集すべき主な情報
- 普段の生活リズム:食事・睡眠・排泄などの日常生活パターン
- 発達の経過:いつ頃から座れた、歩けた、話せたなど
- 好きなもの・嫌いなもの:食べ物、遊び、キャラクターなど
- 家での様子と病院での様子の違い:行動パターンの変化
- 病気に関する子どもの理解度:どこまで説明されているか
- 子どもへの普段の接し方:泣いた時の対応、叱り方など

母親とのコミュニケーションのコツ
- 評価や批判をせず、まず話を聞く姿勢を見せる:「大変ですね」「よく頑張っていますね」など共感的な言葉かけ
- 専門用語を避け、わかりやすい言葉で話す:医療者視点ではなく、相手に伝わる言葉を選ぶ
- 母親の不安や心配を受け止める:「心配なことはありますか?」と積極的に聞く
- 母親自身の体調や疲労にも気を配る:「お母さんも休息されてくださいね」と声をかける
- 良い点・強みを見つけて伝える:「お子さんはとても安心されていますね」など肯定的なフィードバック
母親との関わりでの注意点母親(養育者)への情報収集は、一度にすべてを聞こうとせず、関係性を築きながら少しずつ行いましょう。また、「こうすべき」という指導的な態度ではなく、母親の養育方法を尊重する姿勢が大切です。入院中は母親も不安や疲労を抱えていることを忘れないようにしましょう。
家族の不安への対応
子どもの入院は家族全体に大きな不安やストレスをもたらします。家族の不安に適切に対応することも、小児看護の重要な役割です。

家族の不安の主な原因
- 子どもの病状や予後に関する不安:「治るのか」「後遺症は残らないか」
- 治療や処置に関する不安:「痛い思いをするのではないか」「副作用はないか」
- 入院による生活変化への不安:「仕事との両立」「他の兄弟の世話」
- 経済的な不安:「医療費」「休業による収入減」
- 親としての役割遂行に関する不安:「自分のせいで病気になったのでは」「適切なケアができているか」
家族の不安への対応方法
- 十分な情報提供:病状や治療方針、見通しについてわかりやすく説明
- 傾聴と共感:家族の思いを否定せず、まずは受け止める
- 家族の頑張りを認める:「こんなに面会に来られて、お子さんも安心していますね」
- 具体的な対処法の提案:「付き添いの交代」「社会資源の活用」など
- 他職種との連携:必要に応じて医師、SW、心理士などと連携

家族支援の基本ステップ
- アセスメント:家族の状況、不安、ニーズを把握する
- 計画:家族の強みを活かした支援計画を立てる
- 介入:情報提供、傾聴、共感、具体的な支援を提供する
- 評価:家族の反応や変化を評価し、計画を修正する
入院が子どもに与える影響
入院環境は子どもの発達に様々な影響を与えることがあります。これを「入院による発達退行」と呼ぶこともあります。入院環境が子どもに与える影響を理解し、発達を支援する視点が大切です。
入院が発達に与える可能性のある影響
- 日常生活リズムの変化による影響:睡眠障害、食欲低下、生活習慣の乱れ
- 行動制限による運動発達への影響:活動量の減少、運動機能の一時的退行
- 親からの分離による心理的影響:分離不安、退行現象、情緒不安定
- 同年代との交流減少による社会性発達への影響:社会性の発達の停滞
- 学習機会の減少による認知発達への影響:学習の遅れ、知的刺激の減少

入院中の発達支援のポイント
- 環境の調整:できるだけ家庭に近い環境を整える(好きなおもちゃの持ち込みなど)
- 日常生活リズムの維持:可能な限り、普段の生活パターンを維持する
- 遊びの機会の提供:年齢に適した遊びやレクリエーションを取り入れる
- 学習の支援:院内学級の活用、学習教材の提供
- 家族の面会・付き添いの支援:家族と過ごす時間を大切にする
- 同年代の子どもとの交流促進:プレイルームの活用、集団活動の機会
発達状態を評価するための指標
- カウプ指数(乳幼児用): 体重(g)÷身長(cm)² × 10
- 12~15が標準、16以上は肥満傾向、11以下はやせ傾向
- ローレル指数(学童以上): 体重(kg)÷身長(m)³ × 100
- 100~160が標準、160以上は肥満傾向、100以下はやせ傾向

家族を含めた看護のポイントまとめ
- 子どもを最もよく知る存在として家族を尊重する
- 家族の不安や負担を理解し、支援する
- 入院が子どもに与える影響を理解し、発達を支援する
- 家族の力を活かした看護計画を立案する
- 退院後の生活を見据えた指導を行う
- 家族の思いを受け止め、寄り添う姿勢を大切にする
家族を含めた看護の展開は、小児看護の基本です。子どもと家族を一つの単位として捉え、包括的なケアを提供することで、より効果的な看護が可能になります。
パート6:実習記録の効率的な書き方とまとめ
小児看護実習でつまずきやすいポイントの一つが実習記録です。観察すべき項目が多く、子どもと家族の両方を記録する必要があるため、記録に時間がかかりがちです。効率的な記録の書き方をマスターして、実習を乗り切りましょう。


SOAPの書き方のポイント
SOAP記録は、問題志向型記録(POS)の一種で、情報(S・O)→アセスメント(A)→計画(P)の流れで記録します。小児看護実習では、以下のポイントを押さえて記録しましょう。
S(主観的情報)の書き方
子ども自身の訴えや、家族からの情報など、主観的な情報を記録します。
記録のポイント:
- 子どもや家族の言葉をそのまま「」で記録
- 言葉で表現できない乳幼児の場合は、親の訴えや解釈を記録
- 泣き方や表情など、子どもの反応も記録
- 情報源(子ども本人・母親・父親など)を明記
記録例:
- 「お腹が痛い」と訴えあり【本人】
- 「昨日から機嫌が悪く、食欲もない」【母親】
- 検温時に「いやだー」と泣きながら拒否【本人】
O(客観的情報)の書き方
観察やバイタルサイン測定などによって得られた客観的な情報を記録します。
記録のポイント:
- バイタルサインは年齢に応じた正常値と比較して記録
- 観察した<事実を具体的に記録(「元気がない」ではなく「活動量が減少し、臥床して過ごす時間が増えている」)
- 成長発達の状況も含める
- 家族の様子も客観的に記録
記録例:
- 体温37.8℃、脈拍110回/分、呼吸数28回/分、SpO₂98%
- 顔色やや蒼白、表情乏しい、活動量減少
- 右下腹部に圧痛あり、触ると顔をしかめる
- 母親は表情硬く、子どもから離れず、質問に短い返答のみ

A(アセスメント)の書き方
S・Oの情報を分析し、子どもの状態や問題点を評価します。
記録のポイント:
- SとOの情報を根拠として使用し、何を根拠にそう判断したかを明記
- 小児の発達段階を踏まえたアセスメント
- 子どものニーズだけでなく、家族のニーズも含める
- 強みや正常な側面(ウェルネス視点)も記載
記録例:
- SとOの情報から、急性腹症の症状が見られる。右下腹部の圧痛、発熱、食欲低下という症状から、虫垂炎の可能性が考えられる。
- 4歳児であり、病気や処置に対する恐怖心から検温を拒否していると考えられる。発達段階としては前操作期にあたり、具体的な説明や遊びを通した援助が必要。
- 母親の表情や言動から、子どもの状態に対する不安が強いと考えられる。情報不足による不安が増強している可能性がある。
P(計画)の書き方
アセスメントに基づき、具体的な看護計画を立案します。
記録のポイント:
- 具体的で実行可能な計画を立てる
- 子どもの発達段階に合わせた計画
- 家族を含めた計画も立案
- 短期目標と長期目標を明確に
- 優先順位をつける
記録例:
- 人形を使って検温の練習をし、検温に対する恐怖心を軽減する
- 母親に現在の処置や治療方針について説明し、不安の軽減を図る
- バイタルサインの変動に注意し、異常値があれば速やかに報告する
- 痛みの程度を継続的に観察し、年齢に合わせたスケールで評価する

実習記録を効率よく書くためのチェックリスト
実習を乗り切るための心構え
小児看護実習は、他の領域実習と異なる特徴があり、戸惑うことも多いかもしれません。でも、心構えを持って臨めば、充実した学びのある実習になります。


小児看護実習成功のための5つのポイント
- 子どもの立場で考える:子どもの目線に立ち、子どもの気持ちを理解する
- 遊び心を大切に:遊びを通してコミュニケーションをとり、信頼関係を築く
- 家族との良好な関係を築く:家族を尊重し、協力を得ながら進める
- 観察力を養う:非言語的サインにも敏感になり、細かな変化に気づく
- 柔軟な対応を心がける:子どもの状態や気分に合わせて計画を修正する
実習中によくある困難と対処法
- 子どもが泣いてしまう:無理に接近せず、距離を置いて様子を見る。親の協力を得る。
- 会話が続かない:遊びを通して関わる。好きなキャラクターや遊びについて聞く。
- 親が緊張している:まずは親の話を聴き、共感する。子どもへの関わり方を尊重する。
- 記録が進まない:その日のうちにポイントだけでもまとめる。テンプレートを活用する。
- 実習指導者との関係:分からないことは素直に質問し、アドバイスを積極的に取り入れる。
小児看護実習の総まとめ
小児看護実習では、子どもの成長発達を理解し、その子の発達段階に合わせたケアを学ぶことが重要です。また、家族を含めた看護の展開や、遊びを活用したアプローチなど、小児看護ならではの視点を身につけることができます。

小児看護実習で学ぶべき重要ポイント
- 子どもの成長発達:年齢に応じた特徴と看護
- 効果的なコミュニケーション:発達段階に合わせた関わり方
- 遊びの活用:治療やケアに遊びを取り入れる工夫
- 家族を含めた看護:親との協働と家族支援
- 小児の疾患理解:子どもによく見られる疾患と観察ポイント
- 成長発達を促進する環境:入院中も発達を支援する視点
- 小児看護の倫理:子どもの権利を尊重した関わり
実習は貴重な学びの場です。失敗を恐れず、積極的に子どもや家族と関わることで、教科書だけでは学べない多くのことを吸収できます。この記事で紹介したポイントを参考に、ぜひ充実した小児看護実習を経験してください。
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