【看護学生必見】実習・国試で絶対覚えるべき薬剤完全ガイド – パート1:循環器系薬剤
看護学生の皆さん、実習で「この薬は何に使うの?」「副作用は?」「なぜこの患者さんに処方されているの?」と困った経験はありませんか?また、国家試験で薬理学の問題が出ると「あ、これ苦手分野だ…」と不安になりませんか?

なぜ循環器系薬剤を最初に学ぶのか?
薬理学の学習で循環器系薬剤から始める理由は、決して偶然ではありません。看護学生が最初に循環器薬剤をマスターすべき明確な理由があるんです。
1. 実習で最も出会う頻度が高い
日本人の約27%が高血圧を患っており、心疾患は日本人の死因第2位です。つまり、どの病棟に行っても必ず循環器系薬剤を服用している患者さんがいるということです。
- 一般内科病棟:高血圧薬、心不全治療薬
- 外科病棟:術前・術後の血圧管理薬
- 整形外科病棟:抗凝固薬(血栓予防)
- ICU・CCU:強心薬、昇圧薬
2. 国家試験で必ず出題される分野
過去10年の看護師国家試験を分析すると、薬理学分野では循環器系薬剤が最も出題頻度が高い領域です。
📊 国試出題データ
- 降圧薬の副作用:90%以上の確率で出題
- 抗凝固薬の管理:80%以上の確率で出題
- 強心薬の作用機序:70%以上の確率で出題
3. 解剖学・生理学の知識と直結している
循環器薬剤は、心臓の構造や血管の仕組みと密接に関係しています。1年生で学んだ解剖学・生理学の知識を活用できるため、理解しやすい分野なのです。


4. 他の薬剤理解の基礎になる
循環器系薬剤の作用機序を理解すれば、他の薬剤グループも理解しやすくなります。特に以下の点で応用が利きます:
循環器薬剤の概念 | 他の薬剤への応用 |
---|---|
受容体作用 | 精神科薬剤・麻酔薬の理解につながる |
薬物動態 | 抗生物質・鎮痛薬の投与間隔理解につながる |
副作用監視 | すべての薬剤における観察技術の基礎になる |
5. 患者安全に直結する重要性
循環器系薬剤は、効果が強力である反面、副作用も重篤になりやすい特徴があります。正しい知識を持つことで、患者さんの安全を守ることができます。
循環器薬剤で特に注意すべき副作用
- 急激な血圧低下:意識消失・転倒リスク
- 不整脈:生命に関わる場合がある
- 出血傾向:抗凝固薬による重篤な出血
- 電解質異常:利尿薬による心停止リスク

次のパートでは、循環器系薬剤の全体像を把握して、どのような薬剤群があるのかを整理していきます。実習でパニックにならないよう、しっかりと基礎から積み上げていきましょう!
循環器系薬剤の全体像
循環器系薬剤の全体像を把握することで、実習でどの薬剤に出会っても慌てることがなくなります。まずは「森を見てから木を見る」アプローチで学習していきましょう。
循環器系薬剤の3大分類
循環器系薬剤の分類と主要薬剤 | ||||
---|---|---|---|---|
分類 | 代表薬剤名 | 主な作用 | 実習頻度 | 国試頻度 |
降圧薬 | ACE阻害薬 (エナラプリル) |
血管拡張・心保護 | ★★★ | ★★★ |
ARB (ロサルタン) |
血管拡張・空咳少ない | ★★★ | ★★★ | |
Ca拮抗薬 (アムロジピン) |
血管平滑筋弛緩 | ★★★ | ★★☆ | |
利尿薬 (フロセミド) |
体液量減少・前負荷軽減 | ★★★ | ★★★ | |
強心薬・昇圧薬 | ジゴキシン | 心収縮力増強・除脈化 | ★★☆ | ★★★ |
ドパミン・ドブタミン | 心収縮力増強・血管作用 | ★☆☆ | ★★☆ | |
ノルアドレナリン | 強力な血管収縮・昇圧 | ★☆☆ | ★★☆ | |
抗凝固・抗血小板薬 | ワルファリン | ビタミンK拮抗・抗凝固 | ★★★ | ★★★ |
ヘパリン | アンチトロンビン活性化 | ★★☆ | ★★☆ | |
アスピリン (バイアスピリン) |
血小板凝集抑制 | ★★☆ | ★★☆ |
★★★:非常によく見る ★★☆:ときどき見る ★☆☆:ICU・CCU等で見る

実習でよく遭遇するシーン別薬剤
🏥 実習現場でこんな患者さんに出会います
処方薬:アムロジピン5mg、エナラプリル10mg
看護ポイント:血圧測定、空咳の有無確認、浮腫チェック
処方薬:ワルファリン2mg、ジゴキシン0.25mg
看護ポイント:PT-INR値確認、出血徴候観察、ジゴキシン中毒症状チェック
処方薬:ヘパリン持続点滴、アスピリン100mg
看護ポイント:APTT値監視、出血リスク管理、心電図モニタリング
処方薬:ドブタミン持続点滴、フロセミド静注
看護ポイント:心拍数・血圧監視、尿量測定、電解質バランス
薬剤選択の基本的な考え方
循環器疾患では、患者さんの病態に応じて薬剤を組み合わせて使用します。この「なぜこの薬剤が選ばれるのか」を理解することが重要です。
病態別の薬剤選択パターン | ||
---|---|---|
病態 | 第一選択薬 | 選択理由 |
本態性高血圧 | ACE阻害薬またはARB + Ca拮抗薬 | 心保護・腎保護作用があり、副作用が少ない |
心不全 | ACE阻害薬 + 利尿薬 + β遮断薬 | 心機能改善・予後改善効果が証明されている |
心房細動 | ワルファリンまたはDOAC | 脳梗塞予防のための抗凝固療法が必須 |
急性心筋梗塞 | アスピリン + ヘパリン + ACE阻害薬 | 血栓形成抑制と心保護作用が重要 |


実習で差をつける!薬剤理解のコツ
- 診断名と薬剤をセットで覚える:高血圧→ACE阻害薬、心不全→利尿薬
- 作用機序より副作用を優先:観察ポイントが明確になる
- 患者さんの訴えと薬剤を関連付ける:「咳が出る」→ACE阻害薬の副作用
- 検査値と薬剤効果を結びつける:PT-INR→ワルファリン効果判定
次のパートでは、最も基本的で重要な「降圧薬」について詳しく学習していきます。ACE阻害薬、ARB、カルシウム拮抗薬、利尿薬の4つの主要降圧薬をマスターしましょう!
降圧薬の完全マスター(前半:ACE阻害薬・ARB)
降圧薬は実習で最もよく出会う薬剤群です。日本人の高血圧有病率は約27%で、特に65歳以上では約60%に達します。つまり、どの病棟でも必ず降圧薬を服用している患者さんがいるということです。
① ACE阻害薬(エナラプリル・エナラート)
📋 ACE阻害薬の基本情報
代表薬 | エナラプリル(エナラート)・リシノプリル(ロンゲス) |
作用機序 | アンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害し、アンジオテンシンIIの産生を抑制 |
主な効果 | ①血管拡張による降圧 ②心保護作用 ③腎保護作用 ④ブラジキニン分解阻害 |
適応疾患 | 高血圧・慢性心不全・心筋梗塞後・糖尿病性腎症 |
投与タイミング | 1日1-2回経口投与(朝または朝・夕) |

ACE阻害薬の重要副作用と看護ポイント
ACE阻害薬の重要副作用 | |||
---|---|---|---|
副作用 | 発生頻度 | 症状・機序 | 看護ポイント |
空咳 | 10-20% | ブラジキニンの蓄積により気道刺激 乾性咳嗽が特徴 |
服薬開始時期との関連を確認 痰の性状・咳の時間帯を観察 |
高K血症 | 5-10% | アルドステロン分泌抑制 腎からのK排泄減少 |
定期的な電解質チェック 不整脈の有無確認 |
腎機能障害 | 3-5% | 糸球体内圧低下 特に腎動脈狭窄例で注意 |
BUN・Cr値の定期監視 尿量減少の有無確認 |
血管神経性浮腫 | 0.1-0.2% (稀だが重篤) |
顔面・口唇・舌の浮腫 気道閉塞の危険 |
初回投与時は特に注意 呼吸困難の有無確認 |

② ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)
📋 ARBの基本情報
代表薬 | ロサルタン(ニューロタン)・テルミサルタン(ミカルディス) |
作用機序 | アンジオテンシンII受容体(AT1受容体)を直接阻害 |
ACE阻害薬との違い | 空咳の副作用が少ない(ブラジキニンの蓄積が起こらない) |
適応疾患 | 高血圧・慢性心不全・糖尿病性腎症・ACE阻害薬で咳が出る患者 |
投与タイミング | 1日1回経口投与(朝が一般的) |
ACE阻害薬とARBの比較
ACE阻害薬 vs ARB 比較表 | ||
---|---|---|
項目 | ACE阻害薬 | ARB |
作用部位 | ACE(酵素)を阻害 | AT1受容体を直接阻害 |
空咳 | 10-20%で発生 | ほとんど発生しない |
降圧効果 | 同等 | 同等 |
心保護効果 | 証明されている | 証明されている |
腎保護効果 | 証明されている | 証明されている |
薬剤変更の理由 | 空咳でARBに変更 | 効果不十分でACE阻害薬併用 |
実習での遭遇 | やや多い | 非常に多い(第一選択) |


実習でよくある質問と対応
🤔 患者さんからの質問例
看護師の対応:「いつ頃から咳が出るようになりましたか?薬を飲む前はいかがでしたか?医師に相談して薬の調整を検討しましょう。」
看護師の対応:「お薬は血管や心臓を守る大切な役割があります。生活習慣の改善も並行して取り組んでいきましょう。」
看護師の対応:「気づいた時に1回分を服用し、次回からは通常通りにしてください。2回分を一度に飲むのは避けてください。」
- 血圧測定:起立性低血圧の有無(起立時のふらつき・めまい)
- 空咳の確認:特にACE阻害薬開始後2-8週間以内
- 電解質チェック:カリウム値の上昇(5.5mEq/L以上で注意)
- 腎機能監視:BUN・クレアチニン値の上昇
- 浮腫の観察:血管神経性浮腫の早期発見
次のパートでは、降圧薬の後半として「カルシウム拮抗薬」と「利尿薬」について詳しく学習します。これらの薬剤も実習で頻繁に遭遇するため、しっかりマスターしていきましょう!
降圧薬の完全マスター(後半:カルシウム拮抗薬・利尿薬)
③ カルシウム拮抗薬(アムロジピン・ニカルジピン)
カルシウム拮抗薬は、血管平滑筋のカルシウムチャネルを阻害することで血管を拡張し、降圧効果を発揮します。日本人に特に効果が高いとされ、実習で最もよく見る降圧薬の一つです。
カルシウム拮抗薬の比較 | ||
---|---|---|
項目 | アムロジピン(アムロジン) | ニカルジピン(ペルジピン) |
持続時間 | 長時間作用型 半減期:30-50時間 |
短時間作用型 半減期:2-4時間 |
投与回数 | 1日1回(朝) | 1日2-3回または持続点滴 |
特徴 | 安定した降圧効果 服薬コンプライアンス良好 |
即効性がある 緊急降圧にも使用 |
投与経路 | 経口のみ | 経口・静脈注射・持続点滴 |
実習での遭遇場所 | 一般病棟(内科・外科) | ICU・CCU・救急外来 |
主な副作用 | 下肢浮腫・歯肉肥厚 | 急激な血圧低下・頭痛 |

アムロジピンの重要副作用と対策
⚠️ アムロジピンで特に注意すべき副作用
副作用 | 頻度 | 機序・症状 | 看護対策 |
---|---|---|---|
下肢浮腫 | 10-15% | 前毛細血管拡張により血管透過性亢進 | 足首周囲径測定 弾性ストッキング着用 |
歯肉肥厚 | 5-10% | 歯肉の結合組織増殖 | 口腔ケア指導 歯科受診勧奨 |
めまい・ふらつき | 5-8% | 血管拡張による血圧低下 | 起立時注意・転倒予防 緩徐な体位変換 |
④ 利尿薬(フロセミド・ラシックス)
💧 利尿薬の基本情報
分類 | ループ利尿薬(最も強力な利尿薬) |
作用部位 | 腎臓のヘンレの上行脚でNa-K-2Cl共輸送体を阻害 |
主な効果 | ①強力な利尿作用 ②血管拡張作用 ③前負荷軽減 |
適応疾患 | 心不全・高血圧・浮腫・肺水腫・腎疾患 |
投与経路 | 経口・静脈注射・持続静注 |
効果発現 | 静注:5-10分、経口:30-60分 |
利尿薬使用時の看護で最重要ポイント
- 尿量測定:1時間尿量・24時間尿量をしっかり記録(目安:1mL/kg/h以上)
- 電解質異常:特にカリウム低下による不整脈(K < 3.5mEq/L で注意)
- 脱水症状:血圧低下・めまい・口渇・皮膚弾力性低下
- 腎機能悪化:BUN・クレアチニン値の急激な上昇
- 聴器毒性:大量投与時の難聴・耳鳴り(稀だが重要)
⚡ 利尿薬による電解質異常の管理
電解質 | 正常値 | 危険域 | 症状・対応 |
---|---|---|---|
カリウム (K) |
3.5-5.0 mEq/L |
< 3.0 mEq/L |
不整脈・筋力低下 →K製剤補給・心電図監視 |
ナトリウム (Na) |
135-145 mEq/L |
< 130 mEq/L |
意識障害・痙攣 →生理食塩液補給 |
マグネシウム (Mg) |
1.8-2.4 mg/dL |
< 1.2 mg/dL |
テタニー・不整脈 →Mg製剤補給 |


実習でよく遭遇する利尿薬使用場面
🏥 実習現場での利尿薬使用例
処方:フロセミド40mg静注 1日2回
観察:呼吸困難の改善、下肢浮腫の軽減、尿量増加(目標:100-150mL/h)
処方:フロセミド20mg 朝1回内服
観察:体重変化(±0.5kg/日以内が目標)、浮腫の程度、息切れの有無
処方:フロセミド80mg 1日2回内服
観察:血清クレアチニン値、電解質バランス、血圧変動
- 降圧薬の4本柱:「ACE(エース)でARB(アーブ)がCa(カルシウム)利用(利尿薬)」
- 副作用の覚え方:「ACEは咳(空咳)、ARBはラブ(副作用少ない)」
- Ca拮抗薬:「アムロは浮腫む(むくみ)、ニカルは急降下」
- 利尿薬:「ラシックスはKが不足(カリウム低下)」
- 観察ポイント:「血圧・尿量・電解質・副作用」の4つチェック
降圧薬の基本はこれで完璧です!次のパートでは、心不全や緊急時に使用される「強心薬・昇圧薬」について学習していきます。ICUやCCUで使用される薬剤も含まれるため、将来的にも重要な知識になります。
強心薬・昇圧薬の基本
強心薬・昇圧薬は、心不全や循環不全の患者さんに使用される薬剤群です。ICUやCCUでよく使われますが、一般病棟でも心不全の患者さんには使用されるため、実習で遭遇する機会があります。
① ジゴキシン(ジゴシン)
💜 ジゴキシンの基本情報
分類 | ジギタリス配糖体(強心配糖体) |
作用機序 | Na-K-ATPase阻害による心収縮力増強 |
主な効果 | ①陽性変力作用(心収縮力↑) ②陰性変時作用(心拍数↓) |
適応 | 慢性心不全・心房細動・心房粗動 |
治療域 | 1.0-2.0ng/mL(2.0ng/mL以上で中毒) |
半減期 | 36-48時間(腎機能により変動) |

ジゴキシン中毒の症状と看護ポイント
ジゴキシン中毒の症状 | |||
---|---|---|---|
分類 | 症状 | 出現頻度 | 看護ポイント |
消化器症状 | 悪心・嘔吐・食欲不振・腹痛・下痢 | 最多 80-90% |
食事摂取量・体重変化を観察 |
視覚異常 | 黄視症・緑視症・光がまぶしい・かすみ目 | 30-40% | 「ものが黄色く見える」訴えに注意 |
不整脈 | 心室性期外収縮・房室ブロック・心室頻拍 | 重篤 60-70% |
心電図モニタリング必須・脈拍触知 |
神経症状 | 混乱・せん妄・頭痛・めまい・倦怠感 | 20-30% | 意識レベル・認知機能を評価 |
② カテコラミン系薬剤(ドパミン・ドブタミン・ノルアドレナリン)
カテコラミン系薬剤は、主にICUやCCUで重篤な心不全や循環不全の患者さんに使用されます。強力な作用を持つため、慎重な管理が必要です。
カテコラミン系薬剤の比較 | ||||
---|---|---|---|---|
薬剤名 | 主な受容体 | 主な作用 | 臨床使用 | 実習頻度 |
ドパミン (イノバン) |
β1・α1・ ドパミン受容体 |
心収縮力増強 血管収縮 腎血流増加 |
心不全 ショック 腎保護 |
★☆☆ |
ドブタミン (ドブトレックス) |
主にβ1受容体 | 心収縮力増強 軽度血管拡張 |
心不全 心原性ショック |
★☆☆ |
ノルアドレナリン (ノルアドリナリン) |
α1・β1受容体 | 強力な血管収縮 昇圧作用 |
敗血症性ショック 重篤な低血圧 |
★☆☆ |

カテコラミン使用時の重要な看護ポイント
- 中心静脈ルートからの投与:末梢血管外漏出で組織壊死のリスク
- 持続的な血圧・心拍数監視:15分毎→30分毎のバイタルチェック
- 心電図モニタリング:不整脈の早期発見・対応
- 尿量チェック:腎血流への影響を評価(目標:0.5mL/kg/h以上)
- 末梢循環観察:手足の冷感・チアノーゼ・皮膚色の変化
- 急激な中止は禁物:必ず段階的に減量(離脱症状予防)
🚨 カテコラミン血管外漏出時の緊急対応
- 投与即座中止:これ以上の薬液流入を阻止
- 医師への緊急報告:血管外漏出の報告と指示受け
- 患部の安静・挙上:循環改善と腫脹軽減
- 温罨法・冷罨法:薬剤により使い分け(医師指示)
- 血管拡張薬の局所注入:フェントラミンなど(医師が実施)
- 経過観察:皮膚壊死の有無・組織回復状況


次のパートでは、血栓症の予防や治療に重要な「抗凝固薬・抗血小板薬」について学習します。ワルファリンやヘパリンなど、実習で頻繁に遭遇する薬剤を中心に詳しく解説していきます。
抗凝固薬・抗血小板薬
抗凝固薬・抗血小板薬は、血栓予防や血栓症治療に使用される薬剤群です。脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓症などの患者さんでよく使われ、実習でも頻繁に遭遇します。
① ワルファリン(ワーファリン)
⚠️ ワルファリンの重要ポイント
分類 | ビタミンK拮抗薬(経口抗凝固薬) |
作用機序 | ビタミンK拮抗により凝固因子(II・VII・IX・X)の合成を阻害 |
効果判定 | PT-INR(目標値:疾患により2.0-3.0) |
効果発現 | 2-3日後(既存の凝固因子の半減期による) |
適応疾患 | 心房細動・人工弁置換術後・深部静脈血栓症・肺塞栓症 |
半減期 | 36-42時間(効果消失まで数日) |
ワルファリンで最も重要な食事制限
ビタミンK含有食品と摂取制限 | |||
---|---|---|---|
制限レベル | 食品名 | ビタミンK含量 | 摂取指導 |
禁止 | 納豆・青汁 | 極めて高い | 完全禁止 |
注意 | ブロッコリー・ほうれん草・小松菜・春菊・レタス・キャベツ | 高い | 量を一定に |
軽度注意 | きゅうり・アスパラガス・いんげん・えんどう豆 | 中等度 | 適量なら可 |
制限なし | 大根・人参・玉ねぎ・じゃがいも・トマト・りんご | 低い | 自由摂取 |


ワルファリン使用時の重要な相互作用
💊 ワルファリンの主な薬物相互作用
相互作用 | 代表的薬剤 | 臨床的影響 |
---|---|---|
作用増強 (出血↑) |
抗生物質・解熱鎮痛薬・抗真菌薬・甲状腺ホルモン・アルコール | PT-INR上昇→出血リスク増大 用量調整・頻回検査が必要 |
作用減弱 (血栓↑) |
抗けいれん薬・リファンピシン・バルビツール・ビタミンK | PT-INR低下→血栓リスク増大 用量増加・効果監視が必要 |
② ヘパリン
ヘパリンとワルファリンの比較 | |
---|---|
ヘパリン | ワルファリン |
注射薬(即効性・数分で効果発現) | 内服薬(効果発現まで2-3日) |
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)で効果判定 | PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)で効果判定 |
食事制限なし | ビタミンK制限 |
プロタミンで中和可能 | ビタミンKで拮抗(効果発現まで時間要) |
短期間使用(入院中の治療) | 長期間使用(外来継続治療) |
稀にHIT(ヘパリン起因性血小板減少症) | 妊娠中は胎盤通過するため禁忌 |
③ アスピリン(バイアスピリン)
💊 アスピリンの抗血小板作用
分類 | 抗血小板薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) |
作用機序 | シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害による血小板凝集抑制 |
用量 | 低用量(75-100mg/日)で抗血小板作用 高用量(500-1000mg)で解熱鎮痛作用 |
適応 | 心筋梗塞・脳梗塞・狭心症の二次予防・急性冠症候群 |
特徴 | 不可逆的阻害(血小板寿命7-10日間効果持続) |
主な副作用 | 消化管出血・胃潰瘍・アスピリン喘息・出血傾向 |
抗凝固薬・抗血小板薬使用時の出血観察ポイント
- 皮膚・粘膜:紫斑・点状出血・歯肉出血・鼻出血
- 消化管:黒色便・血便・吐血・貧血症状
- 尿路系:血尿(肉眼的・顕微鏡的)
- 中枢神経系:頭痛・意識レベル低下・神経症状
- 検査値:ヘモグロビン低下・血小板数減少
- バイタルサイン:頻脈・血圧低下・ショック症状
🩸 重篤な出血時の緊急対応
- 医師への緊急報告・CT検査オーダー
- 抗凝固薬の即座中止
- 拮抗薬投与(ワルファリン→ビタミンK、ヘパリン→プロタミン)
- 神経学的評価・バイタル監視
- 医師への報告・緊急内視鏡検査準備
- バイタル監視・ショック対応準備
- 輸血準備・クロスマッチ
- 抗凝固薬中止・拮抗薬投与検討

抗凝固薬・抗血小板薬は「諸刃の剣」のような薬剤です。血栓予防の効果は高いですが、出血リスクも常に伴います。次のパートでは、これまで学んだ知識を実習や国家試験で活用するための覚え方とポイントをまとめていきます。
実習で使える!循環器薬剤の覚え方+国試対策
循環器薬剤の効率的な暗記法
- 降圧薬の4本柱:「ACE(エース)でARB(アーブ)がCa(カルシウム)利用(利尿薬)」
- 副作用の覚え方:「ACEは咳、ARBはラブ(副作用少ない)」
- Ca拮抗薬:「アムロは浮腫む、ニカルは急降下」
- 利尿薬:「ラシックスはKが不足(カリウム低下)」
- 強心薬:「ドパミン・ドブタミンは兄弟、ノルアドレナリンは昇圧専門」
- 抗凝固薬:「ワルファリンは納豆禁止、ヘパリンは注射」
- 検査値:「ワルファリンはPT-INR、ヘパリンはAPTT」

国家試験でよく出る循環器薬剤問題パターン
📝 国試頻出ポイント TOP10
- ACE阻害薬の副作用:空咳が10-20%の患者に出現(必出問題)
- ジゴキシン中毒:悪心・嘔吐・視覚異常・不整脈(症状の組み合わせ問題)
- ワルファリンの食事制限:納豆・青汁の完全禁止(生活指導問題)
- 利尿薬の電解質異常:低カリウム血症による不整脈(病態関連問題)
- カテコラミンの投与経路:中心静脈ルートが原則(安全管理問題)
- 抗凝固薬の効果判定:PT-INRとAPTTの使い分け(検査値問題)
- ニカルジピンの使用場面:緊急降圧時の第一選択薬(薬剤選択問題)
- アスピリンの用量:低用量(100mg)で抗血小板作用(用法・用量問題)
- 血管外漏出の対応:カテコラミンの組織障害(副作用対策問題)
- 妊娠中の薬剤選択:ワルファリン禁忌、ヘパリンは使用可能(特殊状況問題)
国試問題の典型パターンと解法
📋 問題パターン1:副作用の識別
1. 下肢浮腫 2. 空咳 3. 歯肉肥厚 4. 血尿
正解:2. 空咳
解法:「ACEは咳」の語呂で即答。10-20%の頻度で出現し、最も特徴的な副作用。
📋 問題パターン2:薬物相互作用
1. りんご 2. 人参 3. 納豆 4. バナナ
正解:3. 納豆
解法:「ワルファリンは納豆禁止」で即答。ビタミンK含量が極めて高く、効果を著しく減弱させる。
📋 問題パターン3:検査値の解釈
1. APTT 2. PT-INR 3. フィブリノーゲン 4. D-ダイマー
正解:2. PT-INR
解法:「ワルファリンはPT-INR、ヘパリンはAPTT」で区別。目標値は疾患により2.0-3.0。
実習での薬剤観察チェックリスト
実習で必須!循環器薬剤の観察チェックポイント | |||
---|---|---|---|
薬剤分類 | 主要観察項目 | 観察頻度 | 異常時の対応 |
ACE阻害薬・ARB | 血圧・空咳・浮腫・電解質(K) | 1日3-4回 | 起立性低血圧→体位変換注意 空咳→医師報告 |
Ca拮抗薬 | 血圧・下肢浮腫・歯肉肥厚 | 1日3-4回 | 浮腫→足首周囲径測定 歯肉肥厚→口腔ケア強化 |
利尿薬 | 尿量・体重・電解質・脱水症状 | 1-4時間毎 | 乏尿→医師報告 低K血症→不整脈注意 |
強心薬 | 心拍数・心電図・中毒症状 | 持続監視 | 不整脈→医師緊急報告 中毒症状→薬剤中止検討 |
抗凝固薬 | 出血症状・検査値(PT-INR・APTT) | 1日2-3回 | 出血徴候→医師緊急報告 検査値異常→用量調整 |


薬剤記録の書き方(実習記録での記載例)
📝 実習記録での薬剤記載例(良い例)
「患者は高血圧・心房細動の既往があり、エナラプリル10mg・ワルファリン2mgを服用中。血圧は130/80mmHgと安定しており、ACE阻害薬開始後に見られる空咳の症状は認めない。PT-INR値は2.1と治療域内にコントロールされ、出血傾向も見られない。患者は『薬の効果で調子が良い』と話しており、服薬アドヒアランスも良好である。」
「血圧の薬と血液サラサラの薬を飲んでいる。血圧は正常。副作用はない。」
- 薬剤名・用量を具体的に記載
- 効果を客観的データで評価
- 副作用の有無を具体的に観察
- 患者の理解度・受け入れ状況も記載
- 患者さんとの会話に活用:「お薬の調子はいかがですか?咳は出ていませんか?」
- カンファレンスでの発言:「○○さんはACE阻害薬を服用中なので、空咳の出現に注意が必要です」
- 指導者への質問:「この患者さんの利尿薬による電解質への影響はいかがでしょうか?」
- 記録への反映:薬剤名・作用・副作用・効果判定を具体的に記載
- 他職種との連携:薬剤師さんに薬剤について質問・相談
これで循環器薬剤の基本はバッチリです!最後のパートでは、これまで学んだ内容をまとめて、さらに詳しく学びたい方への次のステップをご紹介します。
まとめ:循環器系薬剤のポイント総復習
循環器系薬剤 完全マスター総まとめ | |||
---|---|---|---|
分類 | 最重要ポイント | 覚え方 | 実習・国試頻出度 |
ACE阻害薬 | 空咳(10-20%)・高カリウム血症・腎保護作用 | 「ACEは咳」 | ★★★ 非常に高い |
ARB | 空咳が少ない・ACE阻害薬と同等の効果 | 「ARBはラブ」 | ★★★ 非常に高い |
Ca拮抗薬 | 下肢浮腫・歯肉肥厚・ニカルジピンは緊急降圧 | 「アムロは浮腫む」 | ★★☆ 中程度 |
利尿薬 | 電解質異常(低K血症)・脱水・腎機能悪化 | 「ラシックスはK不足」 | ★★★ 非常に高い |
強心薬 | ジゴキシン中毒・カテコラミンの血管外漏出 | 「ジゴキシン中毒は黄視」 | ★★☆ 中程度 |
抗凝固薬 | ワルファリンの食事制限・PT-INRとAPTT | 「ワルファリンは納豆禁止」 | ★★★ 非常に高い |

実習・国試成功への次のステップ
今回学んだ循環器系薬剤は、薬理学全体のほんの一部です。看護師として必要な薬剤知識を完全にマスターするためには、以下の領域も学習する必要があります:
📚 実習・国試で絶対必要な薬剤領域
- パート2:内分泌・代謝系薬剤 – インスリン、血糖降下薬、甲状腺薬剤
- パート3:中枢神経系薬剤 – 睡眠薬、鎮痛薬、抗精神病薬、抗てんかん薬
- パート4:抗がん剤・化学療法薬剤 – 抗がん剤の種類、副作用、安全管理
- パート5:感染症・抗生物質 – 抗生物質の分類、耐性菌対策、感染管理
- パート6:その他重要薬剤 – 麻酔薬、救急薬剤、小児・周産期薬剤

🎯 薬理学を完全マスターしたいあなたへ
今回の循環器薬剤だけでなく、実習と国家試験で必要なすべての薬剤をマスターしたい方に朗報です!
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🎁 公式LINE限定特典の内容
📋 完全ガイドまとめシート
- パート1:循環器系薬剤(今回の内容の詳細版)
- パート2:内分泌・代謝系薬剤
- パート3:中枢神経系薬剤
- パート4:抗がん剤・化学療法薬剤
- パート5:感染症・抗生物質
- パート6:その他重要薬剤
- 実習での薬剤に関する個別質問・相談
- 国家試験対策の最新情報とコツ
- 現場で本当に使える実践的なテクニック
- 看護学生の悩み解決アドバイス

最後に:あなたの看護師への道のりを全力サポート
薬理学は確かに難しい分野ですが、正しい学習方法で取り組めば必ずマスターできます。今日学んだ循環器系薬剤の知識を土台として、他の薬剤領域にも挑戦していってください。
✨ あなたがマスターできること
患者さんの薬剤について適切に説明でき、看護ケアに活かせる
薬理学分野で確実に得点を重ね、合格により近づける
新人看護師として薬剤管理・患者指導を安全に実施できる
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📚 次回予告:パート2「内分泌・代謝系薬剤(インスリン・血糖降下薬)」
実習で必ず出会うインスリンの種類と使い分けを完全解説!
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